迫る急激な人口減少、移民受け入れという選択に今こそ向き合うべき

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著:毛受敏浩(日本国際交流センター執行理事)

 日本の移民政策が大きく動き始めた。2017年6月13日の日経新聞の夕刊の一面トップは「介護技能実習に外国人 まずベトナム1万人」という見出しが躍った。高齢化が進む日本では2025年には38万人の介護人材が不足する。介護人材不足のままでは「姥捨て列島」にもなりかねない。外国人に介護を頼らざるを得ないと政府も方針を切り替え始めた。

 一方、国会では農業分野での外国人労働者受け入れの議論が本格化している。農業従事者の減少は著しい。2000年の389万人から2016年には192万人へと激減した。最近の「ポテチ危機」も農業従事者の減少が大きく影響している。秋田県など複数の自治体では、国家戦略特区を使って、海外からの農業人材を受け入れる案が提出され、国会では審議が続いている。

◆十数年で東京がなくなる!
 そもそも日本の人口は今後、加速度的に減少していく。2017年の最新の国立社会保障人口問題研究所による人口予測では2020年代に620万人、30年代には820万人、40年代には900万人減少と、今後、人口減少は急速に加速する。十数年で東京の人口が消えるほどの人口減少が起こることを政府機関が認めている。そうなれば、単に経済面だけではなく、社会のさまざまな仕組みが崩れ、日本は急速に縮小していくだろう。

 すでに日本の縮小は始まっている。公立の小中高校の毎年の廃校数は500校を数え、またバスの廃止路線は毎年2000キロを越えている。政府は地方創生や一億総活躍によって人口の回復と労働力の確保を目指しているが、20代、30代の女性の数は右肩下がりで減少しているため、仮に出生率が上がっても、子どもの数自体は増えることは期待できない。また現在、出生率は1.44となっているが、このレベルから人口維持レベルの2.08を回復した例は未だかつて世界にはない。

 このままでは中央大学の山田昌弘氏が予想するように2040年には年間20万人の孤独死という最悪の事態を迎えることにもなりかねない。年間20万人とは毎週にすれば4千人程度であり、これは年間の交通事故死者の数字に匹敵する。

◆移民政策がないと移民問題が起こる!
 こうした事態に直面した政府はようやく外国人受け入れに重い腰を上げ始めた。しかし、「移民政策はとらない」という原則を崩しておらず、一過性の受け入れを議論しているだけだ。しかし、実はそのことが、今後、極めて深刻な移民問題を引き起こしかねない。

 オウム事件の際の狙撃事件で九死に一生を得た元警察庁長官の国松孝次氏。日本の治安のトップにあった国松氏は、日本として移民政策をとることが必要だと政府に二度にわたって提言を行っている。その理由は人口減少、人手不足の中で、正規の外国人定住化の枠組みを作らなければ、非合法の外国人が増えることを心配しているのだ。

 実際にそれが現実になっている。政府の方針は全く変化がないのに、2016年末には47都道府県すべてにおいて在住する外国人が増加した。不法労働と結びつきやすい「デカセギ留学生」と本来は国際協力を目的とする技能実習生の増加が著しい。技能実習生では過去3年で、失踪者が2.9倍となっており、現状のままではかえって治安が悪化するかもしれない。つまり、人口減少が続く以上、正規の受け入れ策がなければ、不正な受け入れが横行するのである。

◆『限界国家』脱出法
 6月に出版された拙著の『限界国家』(朝日新書)。副題は「人口減少で日本が迫られる最終選択」である。人口の12%が外国人という新宿区の多文化共生まちづくり会議の会長であり、移民政策の専門家である著者が、日本で暮らす外国人や受け入れの実態とともに、海外の移民受け入れの失敗例、成功例とそこから日本が学べる点を述べている。さらに、外国人の日本社会への貢献を引き出す仕組みのあり方、日本人とのウインウインの関係の作り方、そしてそれが日本の閉塞感を打破し、『限界国家』を抜け出して新たな時代の幕開けになることを示している。キーワードはなし崩しの受け入れではなく「日本に必要な外国人の定住化」である。

『団塊の世代』の著者である堺屋太一氏は本書に6ページの巻頭推薦文を寄せている。いち早く「団塊の世代」が高齢者になる時代の問題を指摘した堺屋太一氏。それが現実のものとなった今、どのような処方箋を提示するのだろうか、同氏の提言も大いに参考になる。

『限界国家』(朝日新書)はこちらからご購入できます。

Text by 毛受敏浩

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