22億人が肥満・太り過ぎ、進行する人類の肥満化 途上国も子供も

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 最近発表された研究によれば、いまや世界人口のほぼ3分の1が、太り過ぎまたは肥満とされている。また肥満は途上国でも多くみられること、大人だけでなく子供の間にも広がっていることが分かった。太り過ぎは心臓疾患、糖尿病、腎疾患などの原因となるだけに、世界規模の公衆衛生危機と懸念されている。

◆35年間に渡る調査で、世界的に肥満が深刻であると判明
 この研究は、ワシントン大学のInstitute for Health Metrics and Evaluation(IHME)がまとめたもので、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表された。1980年から2015年までに渡り、世界195ヶ国6850万人から集めたデータを分析し、太り過ぎおよび肥満に関しての数字と傾向を探っている。発表された論文では、2015年にBMI(体格指数)が30以上の肥満であった人は7億人以上、BMI25~29で太り過ぎとされた人は15億人と推定されている。

 1980年から、肥満とされる人の数が倍増した国は73ヶ国もあり、ほとんどの国で肥満は増加しているという。すべての年代で、男性より女性の方が肥満の割合が高い。国別でみれば、肥満の成人が最も多いのはアメリカの7940万人で、なんと人口の35%が肥満だ。人口比で見ると、エジプト、サウジアラビアなども上位に入る。肥満率が最も低かったのは、バングラデシュとベトナムでいずれも1%程度だった。

◆途上国や若い世代にも蔓延。健康、経済的リスクも上昇
 これまで肥満は豊かな国に多いと考えられていたが、今回の調査で、途上国でも急速に増加していることがわかった。例えば中国の肥満は1980年には人口の1%未満だったが、現在では5%だ。歴史的にも食糧不足が深刻だったアフリカの国々でも肥満は増えており、ブルキナファソの肥満の割合は1980年には人口のわずか0.3%だったが、2015年にはほぼ7%にまで増加している。ノースカロライナ大学のバリー・ポプキン教授は、これらの国々が今後背負うであろう健康面、経済面での負担は計り知れないと述べている(NYT)。

 若い世代を見ると、肥満が最も多かったのはやはりアメリカで、20歳未満の13%が肥満だという。カナダ、湾岸諸国も子供の肥満率が高く、人口の多いインド、中国でも子供の肥満人口が急増している。世界全体での子供の肥満率は大人に比べて低いが、その伸びは急激であることが指摘されており、バーバード大学のグローバルヘルスの専門家、グッダーツ・ダネイ助教授は、子供のうちから数十年間も肥満であることの長期的影響は現時点ではわからないが、これまで知られているよりも大きな影響があるのではないかと危惧している(CNN)。

◆原因は食の変化?日本も安心していられない
 肥満増加の理由として、都市化による運動量の減少も指摘されているが、今回の研究に参加したアシュカン・アフシン教授は、食の環境の変化を最大の理由と見ている。加工食品、カロリー過多な食品が増えたうえに、食料品のマーケティングもより盛んになったため、これらの食品が手に入りやすくなったことが大きく影響したということだ。ワシントン大学のアダム・ドリューノウスク氏も、人々に健康な食べ物を摂らせることは口で言うほど簡単ではないとし、不健康な食べ物ほど安く、人々は手に入れられるものを食べているのが実情だとしている(NYT)。

 ちなみに5月に経済協力開発機構(OECD)が発表した加盟国の肥満に関する調査では、日本は最も「痩せた」国とされたが、外食産業の発展やコンビニの人気などからわかるように、食の環境の変化という点では世界の傾向と一致しており、決して安心できるわけではなさそうだ。

 IHMEの研究では、肥満は運動量の減少より食の変化が原因とされたが、ケンブリッジ大学の研究者は、座りがちな仕事は太り過ぎのリスクになるとし、1日20分ほどきびきびと歩くことでリスクを軽減できると説いている。結局長く健康的な生活を続けるには、食べ過ぎずよく動くことが基本とのことだ(ドイチェ・ヴェレ)。

Text by 山川 真智子