生理タブーを破れ! 先進国でも残る暗黙のルール 意識を変えるための新たな取り組み

 月経は、女性の身体における自然なことだ。現在世界中で8億人の女性(男性やクィアとしてのアイデンティティをもっている人も含む)に生理がある。それにもかかわらず、世界中の各国で月経がいまだにタブー扱いされ続けている。

 生理に関する迷信めいた考え方が普及している国ではもちろん、月経中でも女性は比較的に“普通に”生活を送ることができる国でさえ、生理の言語化がタブー視され続けている。

 依然として女性を抑圧しているそのタブーをいかにして破れるのだろうか? 現在世界中で月経に関する偏見をなくすために、「月経衛生日」をはじめ、生理に関する知識を広めようとする様々な取り組みが行われている。

◆生理のタブーが女性を抑圧する
 生理にまつわるタブーが様々な形をとっている。極端な場合、迷信めいた考え方が根強い国では、その影響で女性が死にいたるケースも報告されている。ガーディアン紙によると、昨年ネパールでは、月経中に村から追放され、小屋で寝るよう強制されていた15歳の少女が死亡した。

 また、月経中に酷い衛生状況下に置かれている女性が世界中にたくさんいることも「Plan International」の調査で明らかにされている。調査によると、インドでは10人に1人の女性だけが生理用品を手に入れることができる。スーダンにおいては、生理用品を使うことができないうえに、女性たちは村から離れた森のなかに身を隠し、病気、強姦あるいは誘拐される危険に晒されている。

 また、生理にまつわるタブーのために、きちんと教育を受けられない場合も少なくない。生理は恥ずべきものとされるエチオピアでは、生理中に学校を休む少女の割合は28%にまで上がっている。

 生死に関わる問題ではないにせよ、生理に関するタブーや迷信は女性を抑圧し続けている。ドイツのドイチェ・ヴェレ(DW)によると、インドでは生理中の女性は料理することが禁じられており、また汚れた者とみなされているために、お寺に入ることも禁止されているという。

◆世界各国に存在する、生理にまつわる暗黙のルール
 以上のような迷信がかつて日本やヨーロッパの各国でも存在していた。現在生理中でも比較的“普通”の生活を送ることができるだけあって、それらの国々では生理がもはやタブー視されていないと思われがちだ。しかし、生理にまつわるタブーは様々な形を取っており、先進国でも存在し続けているのだ。

 ガーディアン紙で指摘されているように、生理が非常に自然なことであるものの、先進国で暮らす女性たちもそれを隠そうとしており、「恥ずべきもの」とみなしている。そのタブーが生理を言語化することにも影響を及ぼしている。「生理」という言葉自体はもちろん、「生理痛」や「タンポン」など、月経に関する単語を発してはいけないという暗黙のルールが存在しているといえる。

 また、DWで述べられているように、生理用品の広告で月経血が赤茶色ではなく、青い液体で表象されていることも、我々が生きる社会において生理にまつわるタブーが今でも根強く残っていることを象徴している。

◆タブーを破るために恥じらわずに話すべき
 これだけ生理に関するタブーや迷信が根強く残っているなかで、まず生理に関する知識を広める必要がある、と英メトロ紙が指摘している。2014年に設立された「月経衛生日」(5月28日)がその第一歩だろう。

 また、DWが指摘しているように、スポーツ界では女性選手たちが積極的に生理のタブーを破ろうと試みている。2015年にキラン・ガンジーさんがわざと生理用品を使わずにロンドンマラソンを走った。また、2016年にリオ五輪に出場した中国女子競泳の傅園慧選手が、生理中だと発言したことも、ネット上で月経について議論するきっかけを作った。

 さらに、ガーディアン紙が紹介している、生理のタブーを破るための「生理絵文字」も効果的だろう。Unicodeで1088個もの絵文字があり、その中ではニコニコするうんちやユニコーンの絵文字さえあるにもかかわらず、生理を表象する絵文字は存在しない。この不在も生理タブーの存在を物語っていると思われる。それに対して、「Plan International UK」および「Plan Australia」の協力から、生理を表象する絵文字を作るキャンペーンがはじまった。ネットで選ばれた絵文字は、2018年にUnicodeに導入されるようユニコードコンソーシアムに提示されるようだ。

◆日本でも根強く残るタブー
 生理のタブーと聞くと、途上国を思い浮かべる人が少なくないだろう。しかし、実は日本でも依然として生理がタブー視され続けている。女性自ら「生理」ではなく、「月のもの」といった遠回し表現を使うことも、生理用ナプキンやタンポンを買う際にわざわざ紙袋に入れてもらうことも、日本において生理にまつわるタブーがいまだに根強く残っていることを語っているのだ。日本でもそのタブーを破るために、まずは生理に関する知識を男女ともに広める必要があるだろう。

Photo via ViChizh/shutterstock.com

Text by グアリーニ・レティツィア