短時間・高強度の運動は減量効果を高める?

著:Jean-Philippe Walhinバース大学, Research Fellow)

 体重を落とすためには食事量を減らす、もしくは運動量を増やす必要がある。その両方ができれば理想的だ。それは周知の事実である。定期的な運動と食事制限が健康に及ぼす効果は疑いようもない。しかし運動の強度を上げれば、さらに大きな効果が得られるのだろうか。減量を目指す人々が疑問に思うところだ。

 我々の最新の研究により、摂取カロリーの制限と運動を同時に行った場合、燃焼したカロリーが同量であれば、穏やかな運動と激しい運動による効果に差はないということが判明した。

 研究では、太りすぎまたは肥満体型の運動習慣がない中年男女38名の協力を得て、3週間の実験を行った。実験期間中、被験者にはランニングマシンを使用した週に5回の運動と、カロリー制限を実施してもらった。被験者を2つのグループに分け、一方のグループには中程度の運動を、もう一方には高強度の運動を行うよう指示した。

 すべての被験者が1回の運動で同量のカロリーを燃焼し、食事においても同量のカロリーを制限するよう慎重に調整した。これがこの実験で極めて重要となる点である。調整の結果、どちらのグループの被験者も全員が1回の運動につき400kcal を燃焼し、1日のカロリー摂取量を715 kcal制限した。

 運動とカロリー制限を同時に行った場合、運動強度を変えることで脂肪細胞そのものにはどのような変化が現れるのか。これに関する研究は非常に少なく、運動強度と健康効果は比例すると考えられてきた。しかし運動の強度を上げれば時間あたりのカロリー燃焼量が増加するからといって、安易に結論づけてよいものだろうか。我々の研究により驚くべき結果が示された。

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photo kreatorex/shutterstock.com

 

 中強度グループと高強度グループで体重の平均減少量は同程度(2.4kg)であった。この他にもインスリン感受性の向上(2型糖尿病の予防には良い兆候である)、体脂肪の減少、血圧の低下、コレステロール値の減少が見られ、血液検査でも様々な数値が低下したが、いずれも2つのグループの結果に大きな差はなかった。さらに両グループで脂肪細胞内にある重要な遺伝子が活性化するという喜ばしい変化が見られた。この遺伝子が活性化すると脂肪燃焼機能が向上し、脂肪蓄積機能が低下するのである。ここで重要となるのは、中強度の運動を実施した被験者と高強度の運動を実施した被験者のどちらの脂肪細胞においてもこの遺伝子が活性化したことだ。このように被験者には様々な変化が見られたが、体重を落とすことで脂肪細胞の内部にも有益な変化がもたらされたことがわかる。

 実験の結果、全身レベルおよび細胞レベルの両方に好ましい変化がもたらされた。しかしこれらの変化と運動強度との関連性はほぼ見られなかった。また実験期間中に被験者が普段通り好きなものを飲食していたことも注目に値する。彼らは摂取する量を減らしただけである。このことから、健康を促進するために食事の内容を劇的に変える必要はないということが明らかになった。食事内容を変えなくてもその摂取量を抑えるだけで結果が得られる。

◆各人に適した運動法を
 運動時間がなかなか確保できない人には、高強度の運動により短時間で脂肪を燃焼するという選択肢もある。久しぶりに運動を始めた人には、強度の低い運動の方が適しているだろう。また敢えて混雑したジムに通い、大量の汗を流すようなことはしたくないという人もいるだろう。そのような場合にも、屋外でのウォーキングなど強度が低めの運動を行うことで、最終的に同量のカロリーを燃焼できれば、ジムでの運動と同じだけの健康効果を得ることが可能だ。

 バース大学の研究により、健康効果を得るためには運動方法よりも運動によるカロリーの燃焼量が重要であることがわかった。そして運動強度に関わらず、カロリーの燃焼量に応じた同様の効果を期待できるという望ましい結果が得られた。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by t.sato
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Text by The Conversation