圧迫面接は「いじめっ子と馬鹿者が使う無能で非効率的なテクニック」なのか?

 就活もいよいよ本格化してきたようで、街でもリクルートスーツを着た学生たちを最近よく目にする。就職の選考過程では必ずと言って良いほど面接が含まれるが、この面接の手法の一つに圧迫面接がある。実はこの圧迫面接、日本だけのトピックではないようだ。

◆海外の圧迫面接
 米金融情報メディアの『the balance』が日本でいう圧迫面接にあたる、ストレスインタビューについての記事を書いている。緊張しながら面接に対応することで仕事でも同じような状況に陥った時にどう対処するか分かる、というのが圧迫面接の目的であるようだ。具体的なインタビュー内容としては、「なぜ前職をクビになったの?」などの志願者を怖がらせるような質問、攻撃的な態度、予想外の反応、「ニューヨークにネズミは何匹いるか?」などのクイズなどが含まれる。そうした圧迫面接は、会社・人事と志願者の間に繊細で感情的な関係性を生み出すという点で難しい問題であるとも指摘されている。

 こうした圧迫面接の問題点を、全く否定的に捉える意見もある。経済誌『フォーブス』にキャリアアドバイザーのLiz Ryan氏が寄稿した記事では、かなり強い口調で圧迫面接が批判されており、「20年前からの流行り」で、「いじめっ子と馬鹿者が使う無能で非効率的なテクニック」と述べている。求職者が圧迫面接をうまく切り抜けられたとしても、彼らがその後よい社員になるかはまた別の話だ。反対に、圧迫面接で全くダメだった志願者が、すばらしい社員になりえるかもしれないからだ。

◆日本の圧迫面接はどのような内容か?
 日本では現在圧迫面接はどのように行われているのだろうか。ダイヤモンド・オンラインの記事によると、20代の社会人を対象に行われた調査で対象の12%が圧迫面接を受けたことがあると答えた。実際に圧迫面接を受けたことのある人は意外に少ないようだ。

 具体的な圧迫面接の内容としては、質問をしつこく繰り返したり、志望者の人間性を否定するような発言をしたり、ということが例に挙げられる。また中には、恋人の有無や将来的な結婚への意志など、プライベートに関する質問まで含まれることもあるという。

◆圧迫面接の問題点とは?
 一方、就活生は圧迫面接をどう捉えているのだろうか。エヌ・アンド・シーが行った『就職活動に関する調査』によると、83.5%の学生が圧迫面接の噂は志望にマイナスに影響すると答えた。

 また、圧迫面接が違法になるケースもあるようだ。『シェアしたくなる法律相談所』で弁護士の冨本和男氏は、圧迫面接に関して法的な解釈を述べている。これによると、「社会的に許容される限度を超えるような目的・態様で行い、求職者の人格的利益を著しく侵害したような場合」は、圧迫面接について民事上賠償請求などが可能であるという。また面接であっても、「侮辱・名誉棄損・脅迫・暴行・障害・強要・強制わいせつ等」は犯罪である。

 このように圧迫面接は、志願者に与えるネガティブな影響や、法的な危険性もあるようだ。

◆圧迫面接は不要か?
 圧迫面接はネガティブな面が目立つようだが、こういった手法が必要な場面もあるようだ。朝日新聞デジタルでは、JAXAの宇宙飛行士選抜試験について記事にしている。この試験では、「宇宙空間でもパニックにならずにちゃんと動けるか」を見るため、圧迫面接が課された。国際宇宙ステーションという閉ざされた空間で働く宇宙飛行士にとって、ストレスへの耐性は重要であるようだ。

 しかし、誰もが宇宙飛行士になりたいわけではないし、すべての仕事に極度のストレス耐性が必要なわけでもない。あなたが圧迫面接を取り入れている会社の人事担当者であれば、その必要性や手法について今一度慎重に考えてみても良いかもしれない。

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Text by 根本知宜