上智、近大、東大…投資で収益拡大目論む? 海外紙注目、寄付金の少なさが課題との指摘も

 日本の大学が、経営安定化のため、より積極的な資産運用に踏み出そうとしている。背景には、アメリカのように寄付金が集まらないため、収入のほとんどを授業料に頼るという実情がある。また、資金面以外でも、日本の大学は国際化競争で後れを取っている。

◆大学も投資の時代
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、日本の大学の収入の半分を占めるのは授業料だ。資金の運用先には、これまで銀行預金や利回りの低い国内債券が選ばれてきたという。ところが、少子化が進行し、国債の利回りがゼロに等しい今、大学の懐具合も厳しくなり、新たな投資で収益を上げる必要が出てきたようだ。

 例えば上智大学は、収入源を多様化する必要性から、昨年秋には機関投資家として金融庁に登録した。これにより、他のプロ投資家に交じって、インフラ/不動産プライベートファンドなどに投資することが、近々できるようになるという。近畿大学も、超低金利の銀行預金から、債券や株式に投資先を変更。年3.5%のリターンを目指し、キャンパスの改修や大学病院の立て直しに役立てる予定だ。

 また、現在国債購入などの安全な運用しか許されていない国立大学の東京大学も、政府の補助金が削減されることを懸念し、投資先の多様化を求めているという。経営安定のためには、よりアグレッシブな投資が必要というのが、共通した意見だ(WSJ)。

◆寄付金は当てにできない
 一方アメリカの大学は、授業料の他に様々な収入源があり、エンダウメントと呼ばれる民間寄付金・助成金が重要な役割を果たしている。ハーバード大学などは、360億ドル(約4兆3000億円)の巨額のエンダウメントを持っており、大学基金として運用され利益を出している(WSJ)。

 対して日本では、寄付金は非常に少ない。日本私立学校振興・共済事業団の2014年の調査では、4年制大学においては収入の2%で、大学基金を作っても、なかなか額が増えないのが実情だ。コンサルティング会社、マーサージャパンの大塚修生氏は、「寄付文化」のない日本では、大学が大口投資家になるのは難しいだろうと語っている(WSJ)。

◆日本の大学は世界から遠い
 資金力以外にも、日本の大学は、世界の大学との競争において、大きく水を開けられた感がある。エコノミスト誌は「Top of the Class」という大学特集記事で、教育の質を高めたり、公金で補助して学生を獲得したり、という世界の大学の取り組みを話題にし、競争が熾烈かつ国際的になっていると報じた。

 同誌は、ニューヨーク大学(NYU)が2008年に進出したアラブ首長国連邦(UAE)のNYUアブダビ・キャンパスを紹介。UAEを「本物の世界の文化的首都」にしたい、というアブダビ側の希望と、「グローバル・ネットワークを持つ大学」をつくりたい、というNYUの狙いが合致し、アブダビからの資金援助とNYUのブランドネームを武器に、世界中から優秀な学生を集めている、と伝えている。

 他にも、欧米、中国、シンガポールなどの大学について詳しく報じているが、日本の取り組みについては、選ばれた大学を支援する「スーパーグローバル大学」についての3行だけだった。

 こうした危機感は日本国内でも以前から見られる。大阪大学の杉田米行教授は、『Japan Today』への投稿(2012年)で、日本の大学は国際基準からはまだまだ遠いと指摘。特に、英語を通して文化を学んだり、ディスカッションをするような環境があまりないと指摘する。同氏は東京大学が国際化を見据えて秋入学への移行を検討したことを挙げ、システムを変えるよりも、まず中身を変えなければ、日本の大学の国際化はないと述べている。

Text by NewSphere 編集部