皇太子さま誕生日会見 海外は「歴史を正しく伝える」に着目 安倍首相の動勢と絡める

 皇太子殿下は23日、55歳の誕生日を迎えられた。これに際し、記者会見で感想を述べ、特に各地の自然災害で被害を受けた人々に気遣いを示された。しかしながら、国内、海外メディアとも大きく取り上げたのは、日本の過去の歴史認識についてのご発言だ。

◆歴史認識に関する発言
 主な海外メディアの見出しはどれも、殿下が過去の戦争の事実を正しく認識するよう求めたというものだ。そして、「私自身、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、戦争の記憶が薄れようとしている今日、謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています」とのご発言を引用している。

◆安倍首相に釘を刺したのでは、と海外紙
 海外メディアは、殿下のご発言と対比して、最近の日本の動きを伝えている。

 AFP記事を掲載した英ガーディアン紙は、「皇太子、日本は第二次世界大戦の歴史を書き改めてはいけないと述べる」と見出しを付け、副題を「皇太子、戦争での日本の行為を正しく記憶することが重要だとの異例の発言。右翼主義者たちが従軍慰安婦の問題を矮小化しようとする中で」としている。同紙は、国家主義者たちが歴史的犯罪を矮小化しようと模索する議論に対し、釘を刺すかのような発言だ、と報じた。また、歴史認識に関する議論へ発言が及んだことについて、殿下の穏やかな口調ながら徹底した意思の表明は、従軍慰安婦問題などを重要視しない右翼主義者たちの中心にいる、安倍晋三首相への批判とも受け取られた、と伝えている。

 ロイターは、「日本の皇太子は、第二次世界大戦の記憶が薄れていく中で、事実を忘れないよう求めた」とのタイトルだ。そして、やはり、安倍首相は歴史修正主義者だとの扱いだ。記事によると、安倍政権が過去の戦争についての現在の歴史認識が間違っており、日本の印象を損なっているとみている。そのため、それを改めようとしているが、アメリカの学者らから批判を招いている、と報じた。

 BBCは、「皇太子殿下、戦争の歴史を正しく認識するよう求める」とタイトルをつけた。同メディアも最近の安倍政権の動きを伝え、日本の歴史教科書は、日本の戦争時の残虐行為をごまかしていると長年批判を受けていると報じている。

 またAFPは、日本の各紙はどこも、皇太子のコメントについて一本調子で報じたが、ネットユーザーは「安倍首相への警告を含んでいるのではないか」などすぐさま敏感に反応し論議していると指摘している。

◆戦後70年という節目
 海外メディアが取り上げた皇太子殿下のご発言は、戦後70年の節目について記者から感想を求められ返答したものだ。ロイターは、祖父、昭和天皇が戦前は神聖な存在として崇められたが、敗戦後は、平和と民主主義を促したと報じている。また、天皇家に政治的な力はないが、今上天皇は、父である昭和天皇の名のもとに行われた過去の戦争で傷を負ったアジアの国々との関係を癒そうと重要な役割を担っている、と説明している。

 一方、安倍首相は、戦後70年の節目に談話を発表する方針だが、内容については歴代の政権の姿勢を継承しつつ、新たに作成することを明らかにしている。19日には、談話について議論するための、西室泰三日本郵政社長を座長とする有識者会議のメンバー16人を発表している。

 今年の終戦記念日に際して発表される安倍首相の談話に、中国・韓国、そして同盟国アメリカも厳しい目を光らせている、と海外メディアは報じている。

写真出典:宮内庁ホームページ

Text by NewSphere 編集部