後藤氏兄の“日本人らしい”発言に賞賛、とBBC デヴィ夫人の「自決」発言と合わせて報道

 過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件に対し、海外メディアは、日本の世論、特にネット上でどのような動きがあったのか。また、日本政府の事件を受けての、これからの方針について注目している。

◆ネットユーザーの反応
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、昨年8月に行方がわからなくなった湯川遥菜氏を助けるとして、10月にシリア入りした後藤氏への同情が集まっている、と報じる。

 BBCは、多くの人が人道主義者に起きた悲劇だと捉えた、と報じる一方で、日本人の気質についても触れている。後藤氏の兄、純一氏の以下の発言が、SNSで広く賞賛されたことについてだ。「今まで日本政府や日本中、それに世界中で応援していただき、ありがとうという思いだ。兄としては、健二に無事に帰ってきて、皆さんに感謝を述べてもらいたいと思っていただけに非常に残念だ。健二のこれまでの仕事については誇りに思うが、兄としては今回のことは軽率な行動だったと思う」(NHK)

 彼の発言は、日本人がこのような状況で被害者の家族に求める態度にぴったりなものだったという。多くの人が、立派で高潔な非常に”日本人らしい”ものだと感じたのだろう、とBBCは解釈した。

 ネット上の大多数の意見は、人質の無事な帰還を願うものだったが、自己責任だとの声もあった。タレントのデヴィ夫人は1月29日、人質は「ひどく迷惑」で、できることなら、後藤氏に「自決する」よう話したいと自身のブログで述べた。これには批判が集まったが、一方で、このブログに1万1000人以上が「いいね!」を押している、とBBCは伝えている。

 SNSでは、従来のメディアと同様に、日本のイスラムコミュニティーがイスラム国の行為を残虐なものと非難し、日本人人質の解放を求め団結していることを、熱心に取り上げる動きもみられた(BBC)。1月22日、湯川氏が殺害された直後に、イスラミックセンタージャパンがフェイスブックに発表した、人質の解放の求めとイスラム国を非難する声明には、「いいね!」が8000回押され、4000回以上シェアされた。

◆政府への批判はこれから
 NYTは、今のところ、日本の世論は、深い悲しみと安倍首相やその他の政治家たちに支持を示したいという気持ちでひとつになっているようだが、衝撃が消えた後、安倍首相の事件への対応に、より多くの疑問の声が上がるだろう、との政治アナリストの見方を取り上げている。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、日本政府がなぜ対策本部をトルコではなく、アメリカ率いる有志連合国に参加しているヨルダンに置いたのかという質問があったことに言及。

 1日、後藤健二氏が殺害されたとみられる映像が公開された後に、菅義偉官房長官は、イスラム国と接触できなかった、人質の生死についてはヨルダン政府に事件の対応のほとんど全てを任せていた、と述べた。また、事件発生から10日間、日本政府はイスラム国と、現地の部族や宗教的指導者を通じて連絡をとろうと努めたが、うまくいかなかったようだ(NYT)。

 ヨルダン政府のムハンマド・アルモーマニ報道官はヨルダン国営ペトラ通信で、ヨルダン政府は日本人人質救済のために、惜しみなく努力した、と述べた。交渉に際しては、日本政府と常に連絡を取っていたという。「イスラム国は、事態を憂慮する当局の、日本人人質解放のための試みを全て拒否した」(NYT)。

◆被害者の功績に対する言及
 多くの人は、安倍首相が示した怒りを共有しているが、なかには、首相が被害者家族の深い悲しみについいてほんの少ししか触れず、2人が成し遂げた功績について言葉はなかった、と指摘する声もあることをBBCは報じた。

これに対し、アメリカのバラク・オバマ大統領の発言は、極めて対照的だったようだ。同大統領は、「後藤氏はレポートを通じて、シリアの人々の苦悩を外の世界に伝えようと勇敢に行動していた」(BBC)と後藤氏の行動を称賛した。

Text by NewSphere 編集部