訪日中国人8割増 訪日外国人過去最高に貢献 平均12万円出費でロシア人の2倍

中国人観光客

 2014年、海外から日本への旅行者の数は、1341万と過去最高となった、と日本政府観光局(JNTO)が発表した。東日本大震災の起きた2011年と比べると2倍以上の数字だ。特に中国人旅行者の急激な増加が全体の数字を押し上げることになったとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。また、観光庁によると、旅行者が日本国内で消費した金額は、前年比43%も増加し、2兆円以上となった。

◆緊張が続く中でも中国・韓国からの旅行者は増加
 中国は、安倍晋三首相の国家主義的な方針を好きでないだろうが、中国から日本に押し寄せる観光客たちは、首相の経済政策による円の安値を享受しているようだ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は報じている。

 国別では、台湾が韓国を抜いて1位になり、韓国、中国がそれに続いた。2012年から2013年は外交的緊張があり、韓国、中国からの旅行者数は伸びなかったが、2014年は、中国人旅行者の数は前年比83%増の240万人、韓国人旅行者は12%増の280万人であった。

 WSJは、東京でiPadと日本の化粧品を購入した北京の大学生の「政治は私にはなんの関係もない」とのコメントを紹介している。

 中国人旅行者は、その経済力から、歓迎されているようだ、と同紙は報じている。観光庁によると、彼らは、旅行費用に加え、旅先で平均して12万円以上の商品を購入するという。同様に買い物にお金を使うロシア人と比べても約2倍の金額だ。

 日本政府は2014年10月、外国人旅行者により多くの消費を促すため、それまでは、カメラや炊飯器など耐久商品に限っていた、外国人旅行者への消費税免除の枠を拡大した。これには、酒や化粧品などの消耗品が含まれる。免税商品の外国人による購入額は、46ヵ所のアウトレット店で、11月には92億円(9月は48億円)だった(日本百貨店協会調べ)。

◆観光大国にはまだまだ届かず
 安倍首相のすすめる円安が、日本は高くつく観光地だというイメージを払拭するのを助けた、とWSJ紙はみている。

 しかしながら、国連世界観光機関(UNWTO)によると、日本は外国人観光客の数では、いまだに世界で27番目にとどまっている。1位のフランスは、2013年8500万人が海外から訪れた。次いでアメリカが7000万人、アジアの中では、中国が最も多く5600万人だった。

 様々な日本企業が外国人観光客の取り込みを狙い、サービスを改善していることをWSJ紙は紹介しているが、それでもなお、日本は、いまだ外国人にとって多くの難しい障害がある、とも指摘した。例えば、英語や中国語の話せる人は、主要な観光地以外にはあまりいない。また、海外の金融機関のカードは、限られたATMでしか使えないなどだ。

 政府は、環境改善をすすめ、東京オリンピックの開催される2020年には年間2000万人にまで増やすという目標を掲げている。

◆日本独自の文化が将来の鍵
 フォーブス誌では、米国務省出身で日本でのビジネス経験もあるスティーブン・ハーナー氏が、安倍首相のニューヨーク証券取引所での「日本が帰ってきた!」宣言に対し、多くの日本人は「どこへ帰るというのか?」と疑問を持っているのではないか、と日本の将来について意見を述べている。

 同氏は、安倍首相が中東訪問などで示している積極的平和主義に批判的だ。そのような方針よりも、日本が本当に真の姿を取り戻し「帰ってくる」方法のひとつとして、海外、特に近隣諸国からの旅行者の人気の観光地となるということもあるだろう、としている。日本は、現在の円安だけでなく、素晴らしい文化と魅力的な社会を有しているのだから、と意見した。

Text by NewSphere 編集部