ゴミじゃないバイラルメディアをつくる、たった一つの原則 著作権法専門弁護士に聞く

 ゴミじゃないバイラルメディアをつくる方法は、「著作権者の許諾をとる」、これに尽きる。

 国内外の既存コンテンツを、著作権法に反した形(無許諾)で使うから、「ゴミ」などの批判が寄せられる。ネタの重複、真偽不明の情報、煽りタイトル…問題の根本には、紹介しているだけだから責任はない、という開き直りすら伺える。しかし、「引用」などの著作権法上例外が認められている場合を除き、既存コンテンツを使う場合には権利者から許諾を得なければならないのが原則なのである。

「バイラル」はあくまで記事の拡散方法を指すのであり、記事の制作方法は関係ない。日本で「バイラルメディア」=「パクリメディア」と見なされてしまっているのは、メディア自身に問題があるからだ。

◆権利者の努力も必要?
 では、よりマクロな視点から、こうしたパクリ記事がなくなるためにはどうすればよいか。著作権法に詳しい吉羽真一郎(よしば しんいちろう)弁護士(森・濱田松本法律事務所 パートナー)に聞いてみた。

 パクリ記事を書くほうが問題という前提を踏まえたうえで、吉羽弁護士は、権利者側がまめに権利行使(削除要請など)をしていくしかない、と語る。

 法律は整っているが、著作権者が権利行使をしないと対応できないのが現実だ。警察が勝手に取り締まる、というのは時代に逆行する。もちろん、権利者からすれば、「なぜそんな負担を強いられなきゃいけないんだ」という不満は当然ある。確かにその通りだが、細かく対応していかないと、現状の改善は難しい、という。

 他人のふんどしで相撲を取っているようなバイラルメディアは、違法と指摘されて炎上するのは避けたいはず。そのため、もし権利者から削除を要請されれば、記事を消すサイトが圧倒的に多いだろう。

 例えば、ある有名アーティストの映像は、動画共有サイトで探しても、公式なものしか見つからない。非公式にアップされたPVやライブ画像に対処できていない事務所も少なくない中、アーティスト・事務所の努力が伺える。

◆読者は拡散を控えよう
 他方、読者側はどうすべきか。

 吉羽弁護士は、この種の記事を「拡散」することは控えるべき、という姿勢だ。バイラル的な記事ばかりありがたがる風潮にも、疑問を呈している。

 個々の読者のリテラシーに依存せざるを得ない話であり、違法かどうかを判断するのは難しいが…。実際、もし違法だと思ったら読者も拡散しない。気づかずに拡散してしまうことが問題だという。(違法の条件について、詳しくはコチラ

 前述の通り、権利行使をして違法なコンテンツをきっちり「潰す」ことが、個人的には重要だと思う、と語る。

 もしこのまま安易なまとめサイトばかりに読者が集まれば、ひいては、額に汗して記事を作る権利者を害することになり、ウェブ全体の記事のクオリティが落ちていくことも考えられる、という。

 おもしろい記事をこれからも読み続けるためには、私達の努力も必要といえる。

Text by NewSphere 編集部