あなたがシェアした記事、違法じゃないですか? 何が著作権法違反か、弁護士に聞く

 バイラルメディアの問題点として、最も大きいのが著作権法違反だ。私達がソーシャルメディア上で接する記事の中にも、違法なものがあるかもしれない。とはいえ、セーフ・アウトの境界線は、法律の知識がないと判断が難しい。

 そこで、著作権法に詳しい吉羽真一郎(よしば しんいちろう)弁護士(森・濱田松本法律事務所 パートナー)に聞いてみた。
 
◆具体的な事例
 まず著作権法に違反する場合を具体的に知るために、4つほど、バイラルメディアでよくある記事の例を挙げた。

1.リスト記事
 まずは、『モテない人の口癖10選』のようなリスト記事について。例えば全く同様のテーマで書かれた海外記事を翻訳して紹介した場合は、著作権法で禁止されている翻案にあたり、無許諾で行えばアウトだ。全文翻訳はもちろん、要約も基本的に許されない。

 このタイプの記事について、吉羽弁護士によると、「元記事を参考にしてオリジナルの記事を書く」場合のみセーフだという。判断が難しいのは、元記事のリストを紹介し、それに対する分析・コメントを書く場合や、似たテーマの複数記事を基に、数や順番を変えてまとめ直した場合だ。このとき判断基準となるのは、量と内容だ。「元記事の著作物的な部分が、原記事から透けて見える場合」、アウトになるという。

2.動画の紹介
 次は、YouTubeなどにアップされた動画を紹介する記事について。まず、サイトの仕様に従って動画そのものを記事に埋め込むことは、セーフと考えられる。

 では、文章で動画の内容を紹介する行為はどうか。吉羽弁護士は、「映画の批評サイト」ならセーフ、「映画のあらすじ紹介サイト」ならアウトの可能性がそれぞれ高い、と例示する。基本的に、動画の内容を文章で説明する行為は、翻案にあたる可能性が高いのでアウト。ただし、その部分が「引用」に当たる場合は、許諾を得る必要がないため、セーフになる。

 これは、動画の一部をキャプチャして紹介する場合も同様だ。キャプチャして公開する行為は、複製なのでアウト。その画像が、批評のためなど「引用」にあたれば、認められる可能性が高いという。

 引用の定義は難しく、こうした記事は、記事本文と動画紹介文・画像との関係性によって判断するしかないようだ。例えば、「ぜひ見てください」「いかがでしょうか」程度が本文だと、動画紹介そのものが目的ととらえられ、引用にあたらなくなる可能性が高い、と吉羽弁護士は語る。

3.TV番組やラジオ、動画の書き起こし
 2とは異なり、動画を見なくても内容がわかるように書き起こしたものはどうか。これも無許諾で行えば複製または翻案にあたり、アウト。例えば60分のラジオ番組のうち、10分程度の一部を書き起こすことも同様だ。吉羽弁護士は、「意外と知られてないかもしれない」と語る。

 なお、「芸人の面白い一言」など、短く、単体で著作物にならないものを書くのはセーフの可能性が高いという。ただし、そもそも短いフレーズが著作物にあたるかあたらないか、の判断は難しい。

4.掲示板まとめ
 最後に、「掲示板まとめ」について。

 まず、法的には、一つ一つの短い書き込みコメントは、著作物ではない場合が多い。ただし、コメントそのものが、ニュース記事の無断転載や画像の無断転載などアウトの場合、それを掲載したまとめ記事も当然アウトとなる。これは、まとめ記事でも、それを基にした2次まとめ記事(一部バイラルメディアに存在)でも同様だ。

 ただ、吉羽弁護士によると、もし掲示板の運営者が、書き込みに対して権利を持つと宣言し、それが実現した場合、スレッド全体が著作物になるかもしれないという。この場合、1スレッドを無許諾でまとめるなどの行為は、アウトになる可能性がある。

 もちろん、万が一法的に認められても、ユーザーの支持を受けられるかどうかは全くの別問題だが・・・。

 これは、「転載禁止」などの掲示板独自ルールを、まとめサイトが律儀に守っていることにも通じる。炎上し、読者が離れるリスクを考えての判断と思われる。吉羽弁護士は、「ネット上の秩序」と評する。こうした現状を踏まえると、まとめサイトをめぐる著作権議論は、法律とは異なる秩序に基づく「フィクション」になっている場合もあるともいう。

 では、我々は、どうすればいいのか。違法なコンテンツが拡散しないウェブは実現できるのか。こちらについても、吉羽弁護士に教えていただいた

Text by NewSphere 編集部