“トイレットペーパー・パニックの起きやすい国” 日本独自の事情を海外メディア報道

 経済産業省は現在、防災対策の一環として、各家庭でのトイレットペーパーの備蓄を、国民に積極的に呼びかけている。本庁舎1階の広報スペースでは、1日の防災の日から5日間、このテーマに関するパネル展示が行われている。国の機関による、この耳慣れない呼びかけについて、海外メディアは、日本ならではの事情を説明しつつ報じた。

【過去の経験から学ぶ、トイレットペーパーの大事さ】
 日本では過去、災害と世界情勢がトイレットペーパーのパニックを引き起こしてきた、と語るのはブルームバーグである。1973年のオイルショックの際には、買いだめ騒動のため、けが人まで出たことを紹介している。また、2011年の東日本大震災後は、基本的な消費財の中でも特に、トイレットペーパーが多くの店で売り切れとなり、震源地から約370キロメートル離れた東京でさえ、品不足が生じたことを伝えている。

 経産省は、備蓄が必要な理由の1つとして、「阪神・淡路大震災において、被災者が最も困ったのは食料でも衣服でもなくトイレ不足」だったことを挙げている。トイレ不足の原因の1つは、トイレットペーパーの供給不足だったという。ウォールストリート・ジャーナル紙ブログ『日本リアルタイム』はこの点に注目している。

 AP通信は、人々は救援物資として、食料と水のことはすぐに思いつくが、トイレットペーパーのことは簡単に忘れてしまい、手遅れになってから非常に必要とするようになる、との当局者のコメントを伝えている。

【トイレットペーパー製造の重要拠点は、静岡県】
 経産省の発表にあるとおり、「現在、トイレットペーパーの国内生産の約4割は、静岡県で行われて」いるという事実が、AP通信の目を引いたようだ。静岡県の位置する中部日本(東海地方)は、日本で最も地震被害の可能性がある地域の1つとされている、と記事は伝える。静岡県が東海地震に見舞われた場合、約1ヶ月間、国全体でトイレットペーパー不足の危機的状況が続く、と経産省職員が警告したという。

 経産省は、各家庭で、日常用のトイレットペーパーとは別に、1ヶ月分程度のトイレットペーパーを備蓄することを勧めている。ブルームバーグが別の職員の発言として伝えたところによると、1ヶ月というのは、工場が生産を再開する、もしくは輸入により十分な量を確保するのにかかると予想されている期間だそうだ。

【各家庭1ヶ月分の新たな需要発生? キャンペーンの経済効果】
 ブルームバーグは、この“キャンペーン”について、経済効果の側面からも報じている。もしも国民がこのキャンペーンに呼応して、大量のトイレットペーパーを購入した場合、王子ホールディングス、日本製紙、大王製紙といった製紙関連企業に、後押しを与えることになる可能性がある、と述べる。

 トイレットペーパーの販売量は、消費税増税前の買いだめがあった3月以来、横ばいになっているが、このキャンペーンは、売り上げを再び活性化する可能性がある、との大和証券の杉浦徹アナリストのコメントを、ブルームバーグは紹介している。

 経産省は、備蓄には「芯なし・長巻で省スペースでの収納可能な備蓄用トイレットペーパーを備えておく方法」もある、と提案している。本庁舎でのパネル展示では、このペーパーも併せて展示されているという。AP通信はこれを、経産省による新たな需要喚起の売り込み、とほのめかした。

【ハイテクトイレ大国日本にも、やはりトイレットペーパーは必要?】
 各メディアのコメント欄や、大手ソーシャルニュースサイト『レディット』では、日本には温水洗浄便座があるのに、なぜいまだにトイレットペーパーを必要としているのか、というコメントが散見された。ガーディアン紙のコメント欄では、そこから、「操作パネルが宇宙船の操作卓のようだった」などと、日本での温水洗浄便座の体験談に話が弾んでいた。

 ある人は、もしも電力と水道の供給が止まってしまったら、温水洗浄便座は使えなくなる、と明快な回答を与えている。また日本在住のある人は、トイレットペーパーも、水がないとさして使いものにならない、と述べ、東日本大震災以来、非常用水を常時汲み置きしている、と語っている。

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Text by NewSphere 編集部