菅元首相、オーストラリアで反原発活動 ウラン輸出自粛など主張 現地メディア報道

 菅直人元首相は、オーストラリアを1週間の予定で訪問中だ。2011年の原発事故の経験を踏まえ、原発の燃料であるウラン輸出国のオーストラリアで、原発反対、再生可能エネルギーの推進を訴えている。

【豪のウラン輸出に注文】
 豪ABC放送はウェブニュースで、菅氏が「オーストラリアは他国に原子力利用を止めさせ、ウラン輸出を増やさないようにすべき」と述べた、と報じた。

 「世界は原子力から離れようとしており、オーストラリアはその邪魔をすべきではない」とする菅氏は、同国が再生可能資源から作る電気が輸出できるようになることを希望し、「すべての国々が、原子力依存を減らすためにできる努力をするべきだ」と訴えた(ABC)。

 オーストラリアは、世界一のウラン資源を持つとされる。近々、アボット豪首相はインドを訪問し、インドへの初のウラン輸出に向けて、最終協議をする予定だ(ABC)。

【ウラン鉱山訪問】
 豪サンデー・モーニング・ヘラルドは、福島原発にもウランを輸出した、レンジャー・ウラン鉱山の見学を、菅氏が予定していると伝えた。

 鉱山がある場所は、先住民、ミラー族の土地であったが、その反対を連邦政府が押し切る形で、1980年に操業が開始された。ミラー族の関連団体によれば、レンジャー鉱山では、過去34年間に約200件の事故が起きているとされ、昨年12月にも、濾過タンクの故障で、ウラン鉱石の浸出液が現場に流れ出すという事件があった。(サンデー・モーニング・ヘラルド)。

 地元の核反対運動家は、菅氏の訪問は、この業界の規制が弱いことを示す「豪政府への強力な注意喚起」になるだろうと、期待を表した(サンデー・モーニング・ヘラルド)。

【ウランの安全性の是非】
 豪SBS放送も、「人類に核技術などコントロールできない」という菅氏の言葉を紹介し、同氏が先住民に核の危険を警告するだろうと伝えた。

 オーストラリアでは、先住民の土地に多額の補助金を付け、ウラン鉱山から出た核廃棄物貯蔵所を建設することが問題視され、反対運動が起きている。先住民でもあるジリアン・マーシュ博士は、ウラン産業が与えるダメージは、もとに戻すことは出来ないと主張。「土地は我々の命」と言う先住民たちにとって、「その価値はお金に変えられない」ということを、開発業者や政府は分かっていないと批判した(SBS)。

 一方、オーストラリア国立大学の教授、ラメシュ・タクール氏は、適切な手段が取られれば、ウランがもたらすリスクは低いと述べる。地震の多い日本では原子力は適さないかもしれないが、「一国によくないからと言って、他国に悪いとは言えない」とし、環境や廃棄物の問題を解決でき、安心・安全について充分に保証ができれば、原子力の生成の一部を担うことは理解できる、と同氏は述べている(SBS)。

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Text by NewSphere 編集部