原発安全神話の復活か? 「絶対安全」再稼働目指す日本を海外紙が懸念

 福島第一原発の事故から3年が経過した今、日本の原発はすべて停止中である。川内原発など、一部は再稼働に近づいてきたが、まだまだ先は見えない。政府は電力不足の懸念から7月から9月の間、自主的な節電を呼びかけており、安定した電力供給への解決策は、いまだ見つからないのが現状だ。

【新たな安全神話?】
 川内原発1、2号機の事実上の合格証である「審査書案」が、近々了承される見通しとなったことを受け、フィナンシャル・タイムズ紙は、福島の事故以来、崩れたとされていた「安全神話」が、日本の原発論争に戻ってきたと述べた。そして、より厳しい安全基準の導入で、再稼働を目指そうとする政府の姿勢に、以下のように疑問を呈している。

【絶対的安全は幻想】
 1960年代に日本のリーダーたちは、資源も乏しく、原爆の記憶が生々しく残った日本で原子力発電を推進するため、「原発は何が起きても絶対に安全」と国民を説得。そして、この「安全神話」のため、日本の原発の安全基準が長らく見直されることはなく、福島の事故が起きた。

 もちろん、政府と電力会社は原発のリスクが非常に小さいと保証する責任はある。しかし、福島の教訓のひとつは、「絶対的安全は幻想であり危険」ということだったはずだ。

 原発そのものの安全性にしぼった議論は、日本が現在大量に使用する化石燃料等による、他の考慮すべき相対的危険を省いてしまうことになる。また、原発推進派が勝利した場合でも、新たな安全神話に基づいて再稼働されたのでは、福島以前に戻ってしまう可能性もあると、同紙は指摘している。

【海外に活路】
 一方、『ディプロマット』は、原発停止で、電力会社が海外展開を始めたと報じている。

 日本の主要電力各社は、LNGと石炭の輸入価格が下がると予想されることから、8月に料金値下げを発表した(時事通信)。ところが、電力不足の懸念から、政府は自主的な節電を求めるキャンペーンを7月から実施中で、このことが、電力会社の収益確保を難しくしていると『ディプロマット』は述べる。

 東電は日本ガイシとの合弁でイギリスに進出し、2016年3月までに大規模電力備蓄設備を建設すると発表した。これが成功すれば、ドイツやフランスなどの電力卸売市場に参入する計画だとしている(日経新聞)。

 原発の停止で、原子力の未来が不確実になった今、利益を得るため、電力会社は海外に活路を見出す。日本が技術的革命、またはクリーンエネルギー革命のどちらかで、国内エネルギー生産と需要にもう一度活力を与えられなければ、電力会社は十分な発電能力と黒字を確保することに苦しむだろうと、『ディプロマット』は述べている。

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Text by NewSphere 編集部