“秘密主義”日本の死刑に批判の声 袴田氏釈放後初の執行に海外が注目

 法務省は26日、3人の親族を殺害したとして死刑判決を受けていた、川崎政則被告(68)の刑を執行したと発表した。「袴田事件」で死刑が確定した袴田巌元被告(78)が、3月に再審開始決定を受けて釈放されて以来、初の執行となる。同件で問われることとなった死刑制度の在り方を、海外メディアが論じた。

【川崎政則死刑囚】
川崎死刑囚は2007年11月16日、金銭問題で恨みを抱いていた義姉の三浦さんと、泊まりに来ていた幼い2人の孫(5歳と3歳)を刺殺し、3人の遺体を坂資材置き場に埋めた。最高裁が12年7月に被告の上告を棄却し、刑が確定していた。

刑執行は大阪拘置所で秘密裏に行われ、事前の告知、立会人はなく、執行後メディアに公表された。死刑執行は今年初めてで、2012年12月安倍首相就任以降は9人目となる。谷垣法務大臣は、「身勝手な理由で3人の尊い命を奪うという極めて残忍な事件」と述べた。また「被害者遺族にとって耐えがたい事件」であるとコメントした上で、袴田事件を踏まえた慎重な判断だったと主張した。

一方で法相は、現在収容中の死刑確定者128人のうちなぜ川崎被告を選んだのかについては言及せず、現時点で政府が死刑制度を見直す意向はないとコメントしたことを、『Business Standard』は報じている。

【死刑制度への懸念】
『RIA Novosti』によると、川崎死刑囚の刑執行を受けてアムネスティ・インターナショナルは木曜日、死刑制度への懸念が広がる日本において、刑執行に関する秘密主義は司法制度の汚点だとした。死刑執行は秘密裏に行われ、通常執行数時間前に本人に告知されるか、まったく知らされない場合もある。死刑囚の家族は執行後に知ることになるという。

アムネスティ・インターナショナルの東アジア調査部のロザーン・ライフ部長は、「日本の司法制度の欠陥が露わになった直後に、谷垣法務大臣が再び死刑執行令状に署名するとは遺憾だ」とコメントした。また「現在の制度は司法制度と呼ぶに値しないものであり、早急に改革が必要である」と、日本国内での死刑制度の在り方に関する公開討論を呼びかけた。

【問われる死刑制度の在り方】
英ヨーク大学の学生新聞『NOUSE』は、世界の経済大国の中でも先頭を行く先進国アメリカは、死刑制度に対する姿勢だけは遅れている、と問題提起した。現在EU全土を含む98ヶ国は死刑を廃止しており、死刑制度が残るのは58の国となっている。G8では日本とアメリカのみ。昨年、実際に死刑が執行されたのは世界で22ヶ国に留まった。

『NOUSE』は、被害者を始めとする関係者が死刑を望まない可能性もあれば、冤罪の可能性もあることを考慮すべきだと論じた。再犯を防止し、冤罪の被告に希望を与えるという点において、無期懲役の方が意味のある刑であるとした。

最も懸念されるのは、制度そのものの破たんであると、『NOUSE』は指摘する。死刑判決の判断は、少数民族や社会経済的な背景に対する偏見に影響される。アムネスティ・インターナショナルは、1977~1990年間の白人被害の死刑執行が77%、アフリカ系アメリカ人が被害者の場合は15%に留まった、という調査結果を発表している。殺人事件の約半数が、黒人被害者であったことからしても、制度に偏よりがあることがわかる。

法律の究極の目的は、罰することではなく守ることだろう、と『NOSE』は結論付けた。またアムネスティ・インターナショナルは、死刑は「生きる」という最も基本的な人間の権利を否定するもので、いかなる場合も許されるべきではないと主張している。


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NewSphere編集部
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Text by NewSphere 編集部