教員の勤務時間34ヶ国中1位 世界平均38時間…日本は54時間 韓国は平均以下

 経済協力開発機構(OECD)は25日、世界34ヶ国の中等教育に従事する教員に行った調査の結果を発表した。OECD第2回国際教員指導環境調査(TALIS)は、教員の仕事や学校環境に関する国際比較調査研究で、日本は初めての参加だ。

 OECDは、PISAと呼ばれる15歳児を対象とした学習到達度に関する国際的な調査を行っているが、今回は教える側に焦点をあてた調査だ。

【教員は十分な評価を受けていない】
 報告では、世界全体の3分の2の教員が十分な評価を受けていないと感じているという結果だった。多くの教員が、彼らの職の重要性を社会が十分に認識していないと感じているようだ。

 しかし、これはあくまで世界平均の数字だ。国によって感じ方には大きな違いがある。マレーシア、韓国、シンガポール、アブダビなどでは、教えるという職務が高い尊敬を受けているという意識が強い。日本は28%という数字だった。

 ヨーロッパでは、フィンランドが唯一大多数の教員たちが自身の職業に自信を持っている。しかし、フランス、スペイン、スウェーデンでは、10人のうち9人以上の教員が尊敬されていないと感じている。

 総じて、ヨーロッパよりもアジアの数字は良い。

 ただ、社会に価値を認められていないと感じる教員が多い一方で、仕事に対する満足度はどの国も高いようだ。世界平均で77.6%の教員が、仕事を選択する機会があったなら、また同じ職に就きたいと答えたという(米ニュースサイト『デイリー・コーラー』)。

 アメリカ教員組合連盟(AFT)のランディ・ウェインガーテン会長は、教員らが評価されていないと感じているのは、彼らに必要な後ろ盾がないことの現れだ、と説明している。「教員が高い能力を発揮している国では、教員に必要とされるものが与えられている。彼らが受けるべき尊敬の念、教員の仕事に対する地域での十分な評価だ」(デイリー・コーラー)

【雑用に追われる教員】
 OECDは、各国の勤務時間についても調査している。

 調査を行った国の平均的勤務時間は38時間だった。イギリスの教員は、1週間に46時間、シンガポールは48時間、日本は54時間と最も多かった。

 対照的にイタリアは29時間、フィンランドは32時間。受験競争が激しいと言われる韓国は37時間と平均に近い数字だ。

 PISAにも関わっているOECDのマイケル・デビッドソン氏は、勤務時間が長いイギリスの現状について、授業以外の勤務時間が長いことを指摘している。「(イギリスの)教員は、採点や授業の準備に時間を取られ、事務仕事もこなさなければいけない。そのためこのように勤務時間が平均よりも高くなる結果が出た」「授業の準備に手間がかかること、教室の外での仕事も抱えていること、きちんとやろうとすれば誰だって時間がかかる。教員たちは、教える技能を磨きたいと望んでいるが、仕事に追われ時間がないことが大きな障害となっている。彼らには時間的余裕がどうしても必要だ」(英国教員のネットワーク・メディア『テス・コネクト』)

【行儀がいいのはどの国の生徒?】
 態度の悪い生徒にどれだけの時間を割くか、という調査も行われたようだ。

 ポーランドは、行儀の良い生徒が多いようで、授業中に態度を注意するために使われる時間は8%。これに対し時間が最も長かったのはブラジルで20%だった。イギリスは11%だが、公立の学校に限るとその数字はぐっと下がる。日本は、ブラジル、シンガポール、フランスに次いで4番目に長い15%だった。

 またブラジル、メキシコ、オーストラリア、スウェーデンでは、教員への威嚇や侮辱行為がより頻繁に行われているという結果だったという。

 OECDは、教育の質について、何よりもその国の教育制度に左右されると指摘している。


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NewSphere編集部
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Text by NewSphere 編集部