遠のく原発再稼働…7200ページで申請の九電も「不十分」 結論なき規制基準の課題を海外紙指摘

 これまで、日本国内の原子力発電所の再稼働は、5月か6月と予想されていた。しかし、専門家の最近の予想では、電力消費が急増する夏に間に合わない、とみられているようだ。原子炉の安全基準適合の判断が予想よりも長引いているためだ。

 一方、日本は「原発外交」を進めている。安倍首相とフランスのオランド大統領は4日、パリで会談し、「平和的核開発の強化」に合意した。

【規制の定義が未だ不明確】
 原子力規制委員会は2日、九州電力が川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働に向け提出した、原子炉施設の安全性向上のための改造と今後の計画について、7200ページに及申請書類が不十分だと言い渡した。

 規制委員会は、九電がいくつかの火災について十分な対策をしていないことなどが不適合の理由としている。例えば、航空機が原子炉に墜落した場合、発生しうる火災などについての対策がなされていなかったという。九電は指摘を受けた箇所を改善し、1週間以内に再提出の予定だ。

 大和証券の電力担当アナリスト西川周作氏は、再稼働の遅れについて、政治的というよりも規制の難しさが原因だと指摘。「通常、安全基準と疑問点は過去の経験から得た結論をもとに設定される。しかし、現在、多くの学術的議論の結論が出ないままだ」「未だに規制とはどうあるべきかを議論している現状だ」(フィナンシャル・タイムズ紙)

【高効率・低排出の原子炉】
 安倍首相のフランス訪問中、日本の経済産業省とフランスの原子力・代替エネルギー庁(CEA)は、第4世代の高速増殖炉「アストリッド」の共同開発をすすめる署名をした。

 CEAの説明では、同量のウラニウム燃料を用いた場合、アストリッドは現在の原子炉の100倍の電力を発電することができるとしている。核廃棄物もより少ない量になるという。アストリッドの試作品は、2025年頃には運転を開始する予定のようだ。

 安倍首相の、仏原子力企業アレバと日本のアトックス(原子力発電所保守管理・放射性物質関連業務)の合弁会社訪問では、福島第一原発の廃炉作業に話題の主眼が置かれた、と原子力産業団体世界核協会のニュースサイト「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」が報じている。アレバ側は日本との協力について、同社が「廃炉に関する技術とノウハウを提供し、アトックスが日本側の必要とする特殊な解決策を利用することになるだろう」(WNN)と説明した。アレバは、これまでも、福島第一原発の事業に大きく関与してきたという。

【原発利用に積極的な安倍政権】
 東日本大震災後、経営が難しくなっている日本の原子力産業だが、安倍政権は日本の核技術を世界に売り込むことに積極的だ、とブルームバーグは報じている。三菱重工業とアレバは2013年5月、トルコに新しい原発を建設する合意に署名した。日本としては震災後初となる大きな受注だ。

 安倍首相は、原発事業に経済的に依存する多くの地方自治体や、企業団体からの要望もあり、再稼働を支持している、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニングKC) [amazon]

Text by NewSphere 編集部