“なぜカンガルー肉は良くて鯨肉はダメ?”の声も 日本、来季捕鯨再開へ

 国際司法裁判所(ICJ)は先月、南極での日本の調査捕鯨を一時的に停止する判決を下した。日本鯨類研究所(鯨研)は、2015年半ばにも捕鯨を再開する意向を示した意見書を提出し、ICJの判決を歓迎した反捕鯨団体の強い反発を招いている。メディアは一連の流れを報じた。

【ICJ訴訟と判決への反応】
 ICJでの訴訟は2010年オーストラリアが、日本の調査捕鯨は名目に過ぎず、実状は商業捕鯨であると告訴したことに始まる。日本は長年に渡り、鯨類の多くは絶滅に瀕しておらず、科学的捕鯨によって鯨を海洋資源として管理する必要性を主張し続けてきた。またオーストラリアが自国の文化規範を押しつけているとして反発していた。

 ICJの判決では、調査目的で捕獲後食用として販売される科学的捕鯨は、今後承認されないことになる。外務省の四方内閣副広報官は、「責任ある国際社会の一員として判決を尊重し、それに従う」と述べた。またロイターのインタビューに対して鯨研は、捕鯨存続か否かの決断は政府によるとした上でコメントを差し控えた。菅官房長官は記者会見で、「注意深く判決を分析し、今後の方針を決定する」と述べた。

【捕鯨続行への動きと反捕鯨団体の反発】
 ロイターによると、日本政府は来年度以降の調査捕鯨実施は承認していない。一方で日本調査捕鯨に対する妨害の差し止め訴訟で、鯨研は11日米西部シアトルの連邦裁判所に意見書を提出した、と産経新聞は報じている。同書では、2015年以降ICJの決定に沿った形で捕鯨再開の意向を示した。

 ワシントン・ポストによると、オーストラリア当局は捕鯨再開の可能性に強い憤りを表した。「アボット首相は早急に公式声明を発表し、南洋捕鯨を認めずあらゆる法的手段で阻止する姿勢を発表するべき」と、オーストラリア緑の党ピーター・ウィッシュ=ウィルソン議員は抗議した。

 反捕鯨団体「シー・シェパード」創立者であるポール・ワトソン氏は、「ICJの判決が下された後、日本が計画内容を変更して捕鯨を再開する可能性は考えていた」とロイターに語った。「2015~2016年度には捕鯨を再開するつもりだろう」という見方を示している。

 産経新聞では、日本政府の捕鯨再開への姿勢が明確に報じられている点に対し、海外メディアは政府の動きは確定していないという論調である。ロイターによると一部の観測筋は、日本の捕鯨船団は改修が必要で、鯨肉の需要も減っているいま、今回の判決は日本政府が捕鯨計画を中止し国際社会においての地位を高める絶好の機会であるという見方をしている。

【カンガルー肉と鯨肉】
 ビジネス紙アイビータイムズ(オーストラリア版)によると、先日、日本で政治家や著名人に鯨肉を紹介するイベントが行われた。その席上で参加者の女性は、「オーストラリアではカンガルー、韓国では犬を食べているのになぜ日本の捕鯨だけが槍玉に上がるのか」とコメントした。

 オーストラリア外務省の情報によると、カンガルーの肉と皮は世界55ヵ国以上に輸出されている。今日ではEUとロシアが最大の市場で、カンガルー肉の輸出量はアメリカやアジア諸国で増加している。

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Text by NewSphere 編集部