日本の外国人労働者受け入れ拡大は失敗する…“給料減らしの手段”と海外識者が批判

 4日、日本政府は深刻な労働力不足を補うため、外国人労働者の受け入れを拡大する緊急措置を決定した。具体的には「外国人技能実習制度」において、これまで3年間だった技能実習期間の終了後も、さらに3年業務に従事することを可能にするという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)によれば、東日本大震災からの復興に加えて、2020年の東京オリンピックに向けた建設ブームをひかえ、今後5年間で15万人が不足すると政府は予測している。

 とりわけ建設業・農業・林業において顕著な労働力不足の原因として、ウォール紙は、20年に及ぶ政府による公共事業の抑制と、若者の3K職業の敬遠による労働人口の高齢化を挙げている。

【本制度の沿革】
 ロイターによれば、現在本制度で実習を行っている約15万人の殆どが中国人であり、衣料産業や農業が中心である。1993年に開始されたこの制度は本来、日本企業が海外進出する際に現地で採用する労働力の確保を主眼とするものだったという。

 だが、ウォール紙によると、低賃金による非人道的な労働条件で搾取された労働者が、雇用者に対して暴力を加えたり、殺人事件すら起きているという。また、ロイターによれば、奴隷労働につながるということで、2010年には国連から本制度を廃止すべしとの意見も出ていた。

【アベノミクスのパラドックスに対する処方箋】
 ブルームバーグのコラムニスト、ウィリアム・ペセク氏は今回の措置について、このままでは成功は見込めないだろうと述べる。

 外国人の多くは日本人より給料が安く、震災復興やオリンピック建設の特別手当もないし、本国には仕送りもしなくてはならず、労働者本人が日本で使える額はさらに減る。結局、外国人の雇用は日本企業にとって給料を減らすための手段に過ぎない。これでも外国人労働者を呼べるなどと考えるならば、それはアベノミクスの「パラドックス」であるという。

 ペセク氏は、少子高齢化が進む日本にとって、ドイツの移民政策が教訓になるだろうと主張する。富士通総研によれば、「ドイツ人と日本人は、昨年いずれも25万人ほど減ったが、ドイツ国民は12万人増えた。しかも労働人口増加への寄与が大きい」のである。

 日本が多くの外国人労働者を惹き付けるには、優遇税制や、リスクを厭わず挑戦できる若者を育てるような教育改革を含む規制緩和、コーポレートガバナンスのグローバル化、年功制廃止などの実現が必要だと同氏は主張。「日本にやって来る人々の能力をきちんと評価するようにしなくてはいけない」と結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部