「アンネの日記」破損事件、容疑者逮捕 単独犯か?思想背景は?海外メディア注目

 東京都内の図書館や書店で、「アンネの日記」など関連本300冊以上が破られた事件で、警視庁は14日、別の事件で先週逮捕した36歳の男を、杉並区内の図書館の本23冊を破ったとして、器物損壊などの疑いで再逮捕したと発表した。

 容疑者は東京都内在住、無職の男で、調べに対し容疑を認め、「多くの図書館でやった」と供述しているという。

 警視庁は、破損被害を受けた池袋の書店で先月、男が無断でビラを貼っていたとして、建造物侵入の疑いで逮捕していた。同書店の防犯カメラには、この男がホロコースト関連本の並ぶ棚のあたりをうろつく様子が映っていたという。

【事件の動機に「思想的な背景はない」】
 男の動機はまだ不明だが、警視庁は「反ユダヤ主義」など思想的な背景はないとみている。NHKなどの報道によると、容疑者は「アンネの日記はアンネ自身が書いたものではないことを批判したかった」などと供述しているとのこと。不可解な供述もあるため、刑事責任が問えるかどうかも調べているという。

 被害の多くは東京都内で発生したが、横浜市の図書館でも同様の被害が報告されている。警視庁は、男がすべての事件に関与しているかどうか、模倣犯がいるかどうかについては言及していない。逮捕を受け、海外メディアは、容疑者が単独犯なのか、動機は何か、といった点に注目しているようである。

【海外メディアは日本の右傾化への懸念と絡めて報道】
 米国のユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が「強い衝撃と懸念」を示す声明を発表するなど、この事件は国際的な注目を集めていた。ニューヨーク・タイムズ紙などは、日本の「右傾化」との関連を示唆し、日本にも一部に反ユダヤ主義があると報じていた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、戦時中の日本に「ネオナチ」グループは見られなかったものの、昨今、一部の国家主義者が、中国と韓国からの非難に反論しようと、当時の日本の行動を正当化しようとしていると報じ、懸念を示している。

 英BBCも、この事件は日本の右傾化・戦時中の日本の行為の正当化を図る動きに呼応しているのでは、という見方をわざわざ紹介している。

【日本におけるアンネの人気】
 なお、1952年12月に日本語に翻訳された「アンネの日記」は、1953年にベストセラーリストで1位になった。この本は多くの日本人にとってホロコーストについての知識の基礎となっていると、BBCは報じている。

 また、日本は東アジアで唯一、アンネ・フランクの像や博物館を有しており、毎年約3万人の日本人観光客がアムステルダムのアンネ・フランクの家を訪れていると、イスラエルのハアレツ紙は報じた。この数はイスラエル人観光客の訪問者数より約5000人多いという。

アンネの日記 (文春文庫) [amazon]

Text by NewSphere 編集部