東芝の提訴は“韓国企業のけん制” 技術流出事件に対し、韓国紙が疑問

 東芝の主力製品「NAND型フラッシュメモリー」の研究データが、韓国の半導体大手SKハイニックス社に不正流出した。この事件で警視庁は、東芝と業務提携しているサンディスクの元技術者・杉田吉隆容疑者(52)を不正競争防止違反(営業秘密開示)容疑で逮捕した。

 東芝は、収益の柱であるフラッシュメモリーの技術流出で、市場独占率が低下し、損害を被ったとして、杉田容疑者とSK社を相手取り、約1000億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。米調査会社IHSグローバルによると、NAND型フラッシュメモリーの市場独占率は、1位が韓国のサムスン電子(約37%)、2位が東芝(約34%)。SKハイニックス社は、4位(約14%)となっている。

【事件の経緯】
 同容疑者は、2007年4月~08年5月、サンディスクの技術者として勤務していた東芝の四日市工場(三重県)で、東芝のサーバーコンピューターにアクセスし、営業秘密であるNAND型フラッシュメモリーの研究データを記録媒体に無断でコピー。同年7月頃、転職先のハイニックスに提供したという。

【日本の反応】
 この事件を受けて日本政府は、日本企業の技術や情報が他国企業に流出することを断固阻止する意向を表明した、とロイターが報じている。「日本の先端技術の保護と情報の流出を阻止することは、とても重要である。政府として、このようなことが繰り返されないよう対応してゆきたい」と菅官房長官はコメントしている。

 また、サイバーセキュリティーは、安倍内閣にとって重要な課題であり、今回の事件が日本のシステムの脆弱さを露呈したとしている。

 こうした情報流出事件が、刑事事件に発展することは異例であり、国内メディアは、「不正競争行為に対して断固たる措置を講じる」という東芝のコメントとともに、同社が訴訟を起こしたことを大きく報じている。

【韓国メディアの反応】
 一方、韓国の朝鮮日報は、メモリー半導体分野で、韓国企業(サムスン電子やSKハイニックスなど)が技術力、シェアともに先頭を走っていることを指摘。2007年に東芝とロスライセンス契約を締結したSKハイニックスは、フラッシュメモリーに関する技術の多くを自由に使用できることを挙げ、東芝の主張には納得しかねる点も多い、と疑問視している。

 さらに同紙は、このような状況で東芝が提訴に踏み切ったのは、SKハイニックスなど「韓国企業のリードをけん制する意図」があるのでは、と分析している。

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Text by NewSphere 編集部