クラシック業界、苦肉の策!? 佐村河内氏のCD売上アップで海外紙が疑念
全ろうの作曲家、佐村河内守氏はゴーストライターの存在を告白し、今までの作品のほとんどが自作ではなかったことを認めた。2月12日には弁護士を通じてお詫びの手紙を発表し、全く聞こえないことも嘘だったと告白した。これを受けて、海外各紙はその残念な詳細を報じている。
【嘘に厳しい記事が続出】
フィナンシャル・タイムズ紙は、2月12日に佐村河内氏が8ページにおよぶ直筆の手紙を弁護士を通じて公表したと述べ、「多くの人たちを裏切り、傷つけてしまった」という彼のお詫びの言葉に、“20年近くに渡る嘘で”と付け加えている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、佐村河内氏が「心で音楽を感じる全ろうの作曲家」として日本でスターダムに登りつめたものの、すべて音を立てて崩れたと述べた。
ガーディアン紙も“日本のベートーベン”佐村河内氏が「聴こえないのに作曲を続ける心揺さぶる天才」として知られていたとし、本物のベートーベンは30歳ぐらいで聴力を失い始め、公の場での演奏から身を引いたが、曲は書き続け、晩年はほぼ完全に聴力を失っていたと皮肉めいた比較をしている。
【全ろうだったのに聴力が回復?】
今回の謝罪文の中で最も注目を浴びているのは、佐村河内氏の聴力だ。
フィナンシャル・タイムズ紙は、ゴーストライターであった新垣隆氏の「耳に関しては、私の認識では初めて会った時から今まで、特に聞こえないということを感じたことは一度もありません」という記者会見でのコメントを掲載し、これを佐村河内氏が否定していることを伝えている。
手紙の中で佐村河内氏は、「最近になって前よりは、少し耳が聞こえるようになっています」と言い、3年前より聴力が回復してきたとしている。「耳元で、はっきり、ゆっくりしゃべってもらうと、こもってゆがむ感じはありますが言葉が聞き取れる時もあるまでに回復していました」
もっとも佐村河内氏は、聴力は体調によっても左右されるとし、今も聴覚障害があることを証明するため、医師の検査を受けてもよいと手紙の中で述べている。
【代表作は、騒動の中オリコンチャート急上昇】
フィナンシャル・タイムズ紙は、報道が過熱したおかげで、さらに佐村河内ファンが増えたようだと言い、少なくとも好奇心に駆られた人々が引き付けられていると述べている。
佐村河内氏の代表作「交響曲第1番 HIROSHIMA」は、2月3日から9日までの間でオリコンの最も売れているクラシックCDとなり、CD全体では27位と、300位圏外から一気にチャートを駆け上った。
ガーディアン紙は、佐村河内人気の一部は作られたものだったと分析する。日本社会が急速に老いていく中、しぼんでいくマーケットシェアにしがみ付くために、クラシック音楽に人間味を加えることを業界が切望していたという観測筋の話を紹介し、記事を締めくくっている。