“レンタル彼氏”中国で大人気 恋人気分を味わう日本とは違う…切実な事情とは?

 中国では旧正月の時期になると、家族の集まる場で交際相手を紹介しなければならないというプレッシャーが高まる。そんなニーズに応えるため、恋人をレンタルする新しいビジネスが急成長しているという。日本でも、恋人気分を味わうことのできる「レンタル彼氏」のサービスは存在するが、中国の事情は日本とはだいぶ異なっているようだ。

【結婚を望む家族からのプレッシャー】
 旧正月には家族での大きな集まりがあり、未婚の女性にとって彼氏を連れて行かなければならないというプレッシャーはピークに達する。“レンタル彼氏”では、代金を払って文字通り彼氏をレンタルすることで、早く孫の顔を見たいという家族を安心させ自分のストレスも取り除く。

 レンタル彼氏の1人であるSui Wei氏は、彼氏ばかりでなく夫のふりや、偽の結婚式で新郎のふりまでしたことがあると、フィナンシャル・タイムズ紙に語った。罪悪感は消えないものの、「家族での集まりに、彼氏を連れて行かなければならないというプレッシャーを背負っている女性たちに同情する」と言う。

【レンタル彼氏の需要急増に見る社会的背景】
 一人っ子政策により男児が好まれる傾向にある中国では、30代以下の男性人口が同年代の女性人口を上回る。一方で20代後半の独身女性は多く、「残り物」という意味の「剰女」(shengnu)と呼ばれ、国内では同性愛者と同じような窮地に立たされている。

 中国人男性は、自分より社会的地位や学歴の低い女性を結婚相手に選ぶ傾向がある、とフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。残された高学歴・高収入の女性は自分より学歴も収入も劣っている男性を選ばなければならないというミスマッチが起きているという。このずれを埋めるのに登場したのが“レンタル彼氏”ビジネスだ。

【高額なレンタル料金】
 CBCの取材によると、最近レンタル彼氏を始めた北京の学生Zue Ruisen氏は、依頼主の女性とともに400キロ離れた地方まで女性の家族に会いに行く。500ドルを475ドルまで値引きすることになったとはいうものの、ホテル代や旅行費は女性が払う。

 さらに、いっしょに買い物に行くのは1時間10ドル、映画を見に行くのにはチケット代と映画のジャンルごとの料金、手をつなぐ、抱きしめるのは1回ごとに1ドル、など追加料金が発生する。最終的な金額は、Zue氏が依頼主と訪れる地方のひと月の給料分にもなる、とCBCは報じている。

【レンタル彼氏本人たちの思いは?】
 Sui氏は最近恋に落ち、休業中であることをフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「彼女に本当のことを知られるのが恐ろしい」と言う。またZue氏は、本当の彼女はすでにひとりで地元に帰っており、仕事のことは説明していないとCBCに打ち明けた。

 このレンタルビジネスには、レンタル彼女というものも存在するという。レンタル彼氏産業はまだ確立されていないものの、結婚適齢期の女性が増えるとともに需要も増えつつあると、フィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

Text by NewSphere 編集部