”南京大虐殺否定”も… NHK幹部の歴史認識発言に、海外メディアが危機感

 NHKの独立性が海外メディアで問われている。籾井勝人NHK新会長が、就任会見で「政府が右というものを左と言うわけにはいかない」とコメントし、さらに特定秘密保護法や首相の靖国参拝についても批判的立場をとらないことを表明した。NHKが、政府の意向に沿う内容の放送を行うのでは、と複数の海外メディアが伝えている。

【NHKに対する政府の影響力】
 NHKの経営委員は、政府から任命された12人で構成され、そのうち4人は安倍首相自らが任命している。その経営委員がNHK会長を任命することになっている。

 安倍首相の息のかかったメンバーにNHKが管理されはじめたとして、海外メディアは警告を鳴らしている。ニューヨーク・タイムズ紙は、「NHKが政府の広報機関になってしまうのではと危惧している」という野党議員のコメントを掲載している。

【安倍政権からの圧力?】
 NHKは、愛国主義者からの怒りを買うような報道や、ドキュメンタリーを多く制作してきた。そのNHKを安倍首相が改革に乗り出したというのが、フィナンシャル・タイムズ紙の分析だ。海外では、安倍首相を右寄りとみる向きがある。そのため、NHKは安倍政権からたびたび圧力をかけられてきたと同紙はレポートしている。

 2005年に作成した戦争ドキュメントをめぐって、NHKに対し、安倍首相と自民党員から圧力がかかったと朝日新聞が数年前に報道した。前NHK会長の突然の辞任も、政権からの圧力があったのでは、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。前会長の松本氏は、原発問題や普天間基地問題で政府批判を繰り広げていた。

【南京大虐殺はなかった】
 また、NHK経営委員の作家・百田尚樹氏は3日、東京都知事選候補者の応援演説で、南京大虐殺を否定するなど持論を展開した(なお中国は30万人が殺されたと主張しているが、海外の研究者は被害者数を42,000人としている)。これに対し、菅官房長官は、百田氏の発言は個人的意見で放送法に違反せず、「政府としてこの問題に言及することはない」とコメント。

 AFP通信は、会長や経営委員のこうした発言から、NHKの番組制作の独立性が失われるのでは、と懸念を表明している。

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

Text by NewSphere 編集部