さらなる海洋流出の可能性? 福島原発の危険度があがった3つの理由

 19日に発覚した、福島第1原発の地上タンクからの大量の放射能汚染水漏れについて、21日、原子力規制委員会は、国際的な事故評価尺度で下から二番目のレベル1としていた暫定評価を、2段階上のレベル3に引き上げた。

【これまでの「汚染漏れ」との違いとは】
 震災後、放射能汚染の漏洩は繰り返されてきたが、事故評価尺度がついたのは今回が初めてだ。では、なぜ、今回の事故が危険視されるのか。

 第一に、今回の事故は、「始まりに過ぎない」可能性があること。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回汚染水が漏れ出したタンクが、かねてより構造上の脆弱さを危険視されてきた急ごしらえの「臨時タンク」であることに着目。同型のタンクがさらに300基以上あることを深刻視している。

 同紙によれば、福島第一原発では、原子炉を冷却するために使用した後の高濃度汚染水が毎日400トンずつ増えている。この汚染水の保管場所として、敷地内には、計58000トンの容量を持つ地下貯水槽もあったが、4月に漏洩が発覚して使用が断念された。そのため、地上タンクの増設を急がざるを得ず、「臨時タンク」を採用したことが、今回、裏目に出た形だという。

 問題のタンクは、鋼鉄製の部材をボルトでつないで組み立てる「フランジ」構造で、かねてより、ゴム製パッキンの劣化やボルトの緩みがあれば、水漏れの危険があると指摘されてきた。同型タンクの漏洩は、これまでにも4度発覚していたが、今回は、発覚が遅れた形だ。

 東電は今後、より頑丈な溶接するタイプのタンクを増やしていくとはしているが、汚染水の収納場所確保の緊急性も深刻だ。しかも、敷地内にタンクの置き場所事態がなくなりつつあるという大問題も指摘されている。

 第二に、漏出した汚染水の放射性物質がかつてない高濃度であること。

 漏出したタンクの汚染水は、先日海洋流出が発覚した地下水(で薄められた汚染水)とはまったく異なり、いわば原液。ナショナル・ジオグラフィックによれば、ストロンチウム90やセシウム137などの放射性物質が極めて高濃度で検出されている。これは、60㎝の近距離で被曝した場合、1時間で、原発作業員の年間被ばく上限の5倍に相当する線量で、10時間以内に、被曝した人物は、吐き気や白血球数の低下など、放射性の病状を呈するという。

 第三に、海洋流出の可能性が高まっていること。

 タンクから漏れ出した汚染水、約305トンの大半は地面に染み込んだと見られ、東電は21日時点では海洋流出の可能性はほとんどないとしていた。しかし、原子力規制委員会の指示を受け、海につながるタンク近くの排水溝を調べたところ、毎時6ミリシーベルトと高い線量を計測し、「汚染水が流れなければあり得ない数値で、海への流出は否定できない」と見解の見直しを迫られている。

 福島第一原発からの放射能漏れを研究している、米マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所のケン・ブッセラー教授は、魚や人間の骨に濃縮、蓄積される点で、危険性が高いストロンチウム90の海洋漏れの可能性に警鐘を鳴らし、もっとデータが必要だと述べているという。

【対策は可能なのか?】
 とかく、後手後手になりがちな震災後の対応から、東電の原発管理能力への批判は高まる一方で、政府の喫緊の介入が求められているが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、問題の根はもっと深いと指摘している。

 同紙によれば、40年前に、福島第一原発が建設された敷地には川が流れていた。建設のために丘陵を削って、川は無くなったが、背後に控える山から、川になるほどの豊富な水量が海に流れ出ていることには変わりがない。それこそが、現在海に流れ込んでいる「地下水」であり、その「流れ」をせき止めるのは至難の業だとしている。

 要するに、そもそもの最初から、すべてが場当たり的で計画性がなさすぎる、との指摘だ。

【内外の協力体制は取れるのか?】
 ブルームバーグは、事態がすでに東電の手に余り、東電みずからそれを認めていると指摘している。

 東電の相澤善吾副社長は会見で、汚染水の大量漏洩について謝罪し、汚染水対策を抜本的に見直していると釈明。「海外を含む国内外専門家の叡智と、社内各部の総力をつぎ込み、汚染水対応にあたる、新たな体制の元、意思決定の迅速化、リソースの集中投下を図る」と意気込みを述べた。

 これに対し、国際原子力機関(IAEA)は、支援の用意があることを表明。さらに、米国原子力規制委員会(NRC)も「情報や援助の要請があれば、提供する」としている。ただ、スポークスマンは、東電からの要請は受けていないと述べている。

 元NRC委員長のデール・クライン氏は、日本の原子力改革監視委員会委員長に就任後、重ねて、東電の情報公開の遅れや閉鎖的な体制を非難してきた。そして、今回もその指摘は繰り返された。

 「国内外の叡智を集め、国の積極的な関与をもって、国を挙げて、世界のみなさんの支援を受けて進める。それぐらい大きい仕事だと思っている」・・・相沢副社長のこの談は現実になるのだろうか?

Text by NewSphere 編集部