韓国裁、戦時中の「強制労働」で日本企業に賠償命令 海外紙が分析する影響とは?

 ソウル高裁は10日、戦時中の「強制動員」被害者らが起こした訴訟で、日本の新日鉄住金(旧新日本製鉄)に対し賠償を命じた。戦後賠償の問題で、韓国の裁判所が日本企業に賠償を命じたのは初めて。
 原告4人は、1941年から43年にかけ、事前の話と異なる辛い労働を強いられ、賃金もきちんと支払われなかったとして、2005年に1人1億ウォン(約880万円)の慰謝料を求め、韓国で訴訟を起こしていた。原告は、2年間の労働の対価は、タバコ1箱分に過ぎなかったと語っている。
 同高裁は、原告の主張を認め、原告1人あたり1億ウォン(約880万円)と遅延損害金の支払いを命じた。
 海外紙はこの判決の背景と影響を報じている。

【解決済みでは?日韓の見解の相違】
 日韓両政府は、1965年の日韓請求権協定により、個人の賠償請求権は消滅しているとの見解で一致している。
 しかし2012年5月、韓国最高裁は、個人の補償請求を認める判断を初めて示していた。今回の裁判も、この判決を受けての差し戻し審理だった。

 同日、菅官房長官は記者会見で、日韓間の財産請求問題は解決済みであり「容認できない」と述べた。
 新日鉄住金も同様に、日韓協定を否定する不当な判決を遺憾に思うとして、上告する意向を示している。

【更に拡大する可能性も・・・今後の影響は】
 同様な訴訟は他にも4件あり、三菱重工や不二越が含まれている。早ければ今月30日に判決が下される見通しだという。フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の判決は重要な判例になり、4件の訴訟に影響を与える可能性が高いと指摘している。

 なお日本の企業は、韓国で大々的にビジネスを展開している。日本は韓国に対し、2012年度は45億ドルもの海外直接投資を行っている。今回の判決でビジネスに影響が及ぶと懸念する声もある。

【原告歓喜「日本で負けたが祖国で勝った」】
 原告は、大阪で新日鉄住金に賠償や未払い賃金を求めた訴訟を起こしていたが、戦時中の日本製鉄と新日鉄住友とでは同じ「実体」ではないなどとして却下されていた。
 原告の一人は判決後、日本での判決には負け続けたが、祖国に戻って「我々は勝利をつかんだ」と述べ、最高の気分であると語っている。

 なおロイターによれば、強制労働されたとされる韓国人の数は公式的な概算がないが、あるメディアは何十万とみなしているという。

Text by NewSphere 編集部