グーグルが福島「警戒区域」の映像を公開 町長が託した思いとは

グーグルが福島「警戒区域」の映像を公開 町長が託した思いとは グーグルが、東日本大震災と原発事故で大きな被害を受けた福島県浪江町の様子をストリートビューで公開した。同町は半分が福島第一原子力発電所から20キロ圏内にあたるため「警戒区域」となっており、残りも「計画的避難区域」に指定されており、2万1000人の町民全員が全国の避難所で生活している。公開されたのは3月4日から2週間にわたり撮影された沿岸部から市街地で、制限区域でのストリートビューの撮影は初。
 海外各紙は今回の撮影を同社に依頼した馬場有町長の切なる思いを報じている。

【故郷とつながっていたいという切なる思い】
 馬場氏は、ストリートビューを通して町の現状を見ることで、避難中の町民らが故郷との繋がりを失わずにいつか戻ってくる希望を保ってもらいたいという願いを込めて、グーグルに依頼をしたとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
 また、世界中の人々にも原発事故の悲惨な現実を見てほしいと語っているという。原発事故の影響で住民が避難を余儀なくされている地域では、数年、数十年後にいつか安全に生活を再開できる日が来る時のために、住民らとの絆を維持するために頭を悩ませているようだ。一方で、復興が見えない浪江町の様な地域では、人々をつなぎとめておくのは困難であることも現実だ。馬場氏は住民の帰還を望みながらも、浪江町の様子を記録として残すことも今回の目的の一つだったという。

 津波で家を失った男性は、ストリートビューの公開映像を見てがっかりする人もいるかもしれないと話しているとガーディアン紙は報じている。しかし、同時に震災から2年間、ほとんど手つかずのままであった地域が来月から一部、規制が緩和されることに喜びも感じているという。被害を目の当たりにするのは辛いだろうが、懐かしい土地に戻れるのは楽しみだと複雑な心境を語っている。

【未来のために記憶と記録を残す】
 馬場氏はまた、「震災後、世界は未来へと進んでいる。日本も復興へ歩み始めている。しかし、浪江町は時がとまったまま」だと無念さをにじませているとニューヨーク・タイムズ紙は取り上げている。原発事故を知らない世代へも、この被害とこれまで築き上げてきた歴史と文化を伝えて行きたいという同氏の願いを報じている。

 グーグルはこれまでも被災地の記録を収集・公開し、情報の発信に努めてきた。これらは地図サービス「Google マップ」や3D地図ソフト「Google Earth」、東日本大震災被災地の写真・動画を集めたサイト「未来へのキオク」で閲覧可能だ。今後も自治体や関係当局と協力しながら、範囲を拡大していく意向だ。また、浪江町の映像公開に合わせ、馬場町長は同社公式ブログへその思いを寄稿している。

福島県浪江町のストリートビューの公開によせて

Text by NewSphere 編集部