海外紙が報じたボーイング機問題 日本に与える影響とは

海外紙が報じたボーイング機問題 日本に与える影響とは 16日午前8時半、宇部発羽田行きの全日空NH692便ボーイング787型機(乗客129名・乗員8名)で機体トラブルが発生。同機は高松空港に緊急着陸、乗客乗員は非常用シュートで緊急脱出した。脱出の際に3人が軽傷を負った。

 692便では前部電気機器室内のバッテリー系統の異常を知らせる警報が作動、機体外部および操縦室内の発煙が視認され、客室内には焦げ臭い異臭が漂ったという。着陸後、バッテリーが黒く変色し電解液が漏れているのが確認されたが、全日空はバッテリー火災という証拠はまだないとコメントしている。日本航空の同型機も、7日にボストン空港でバッテリー火災を起こしている。また、前部ではなく後部の電気機器室のトラブルがすでに相次いでいたが、米国の規制当局は同型機について先週、安全宣言を出したばかりであった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、全日空機の問題のバッテリーが10月、エンジンを始動できずに交換されていたものだと指摘した。

 国土交通省は本件を重大事故につながりかねない「重大インシデント」に指定。全日空および日航は少なくとも17日まで同型機の運航を停止し、保有機の安全確認を進めるとしている。米国連邦航空局(FAA)も、同型機の運航停止命令を出した。しかし米国ボーイング社は、新型機の就航初期において不具合は付き物と主張。同型機を保有する各国の他の航空会社も、同型機には充分な安全性があるか、またはボーイング社は問題を早期に解決できるとみて、運航を続けている。ちょうど同日、LOTポーランド社はワルシャワ発シカゴ行きの大西洋横断便をスタートさせていた。

 787型機はボーイング社の最新型機で、就航から15ヶ月が経過。従来機に比べ電力に多くを依存しており、燃費に優れる。現在までに50機が生産されただけ(うち24機を全日空と日航が保有)であるが、同社では今後20年間で5000機の受注を見込み、現在の月産5機から年内に10機へと増産計画を進めている。同型機が搭載するリチウムイオンバッテリーは、電気自動車やノートパソコンなどで火災発生例があり、航空機への搭載に関してはFAAによって条件を付けられていたが、同社は軽量で大容量、かつ急速充電が可能であり同機に最適として、野心的に採用したという。

 なおニューヨーク・タイムズ紙は、問題のバッテリーを含め同型機には日本製の部品が多く、機の注文が遅延あるいはキャンセルされることになれば日本のメーカーにも影響が及ぶと指摘した。

Text by NewSphere 編集部