“日本の狭小住宅はクール” 限られた空間を有効活用、世界が驚く日本の発想力
日本の住居はかつてその狭さから海外で「うさぎ小屋」と表現されることもあった。確かに限られた土地をいかに有効活用するかは、人口の密集した日本にとって非常に切実な問題だ。そのような状況があり日本は長い年月をかけて様々な工夫やアイデアを生みだしてきた。その試みは海外も気になるところのようで、折に触れてメディアで取り上げられたりしている。また、近年では一戸建てだけではなくマンションの部屋でも面白い試みがなされているようだ。
◆海外も驚く日本の「小さな家」
CNNが昨年、「小さく圧縮:日本のクールな狭小住宅の秘密」という見出しで建築家の山下保博氏のインタビュー記事を公開。山下氏が語る、狭いスペースを広く見せる、10の工夫を紹介している。
記事では、日本人が小さな家を求めるのは、土地の不足や土地の価格、税金に加え、頻繁にやって来る地震や台風による危険性のためだと説明。その一方で、ミニマリストのライフスタイルを志向し、小さな家を好む人もいるとする。山下氏はその考え方は禅と、必要以上のものは必要ないという考え方の影響があるとしている。
「もちろん、うまく設計された狭小住宅の素晴らしいところは、全く「必要最低限のもの」に見えないことだ」とCNNが述べているように、山下氏の設計する狭小住宅は単なる「小さな家」ではなく、見るものをわくわくさせる工夫が詰まっているのだ。
◆外からは小さく見えても実際は……
最近、日本のある住宅が驚きと称賛をもって多くの海外メディアで取り上げられた。水石浩太建築設計室が設計した東京・杉並区にある「堀之内の住宅」だ。川沿いに建つこの家は非常に細長くいびつな形をしており、一見非常に住みにくそうに見える。
ところが、「外からは極めて小さく見えるが、中身はタイム・マシーンのようなクオリティ」とイギリスのデイリー・エクスプレス紙が形容するように、内部は外観からは想像できないほど広く、機能的にも非常に使いやすそうだ。同じくイギリスのデイリー・メール紙も多くの写真を交えて取り上げており、東京と同様に人口の密集したロンドンを抱え、高い関心を持っているのかもしれない。
◆間取りが自由自在に変化。工夫次第で夢がかなう
一方、こちらはマンションの例だが、外国人ならずとも、クールに感じる人が多いのではないだろうか。伊藤忠都市開発株式会社が、実際のモデルルームを改築して実証実験的に制作した「間取りの無い家」である。都心のマンションの限りあるスペースを有効に使い、生活シーンに応じて間取りを自由自在に変化させるというコンセプトを実現したもので、今までにない興味深い暮らし方を提案している。
「間取りの無い家」に入ると、一見広い、家具も何もないがらんどうのワンルームが出現する。しかし、壁を探るとキッチンや様々なスペースが現れ、ライフシーンに応じて間取りを変化させることができる。驚くべきことに、壁から茶室やホームシアターを引き出せるといった現在のマンションにはない設備まで備わっている。
「間取りに合わせて生活する」のではなく、生活シーンに応じて「間取りをフレキシブルに変化させる」という発想から生まれたという。住まいに関する知識が豊富なタレントのテリー伊藤氏をアンバサダーに迎え、企画段階から様々な意見交換を行いながらコンセプトを練り上げたようだ。伊藤氏が「間取りの無い家」を紹介する様子はWEB上で公開されている。
前述のインタビューで山下氏は、「不自由さをうまく活用する」、「収納を隠す」、「家を自分流にアレンジする」などの工夫を述べているが、こちらの「間取りの無い家」にもそれが当てはまるだろう。単純にスペースを広くしようとするのではなく、工夫次第でいろいろな想いをかなえることができるということがよくわかる。こういった空間をうまく活用する日本のアイデアは今後世界をリードしていくのではないだろうか。
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