海外が報じた日本(2013年7月)
1.サマリー
7月、海外各紙の日本報道は、前月に比べて多かった。特に参院選やアベノミクス、原発、中韓との緊張関係について取り上げられた。
2.参院選
21日に行われた参院選では自民党が圧勝、国会の「ねじれ」が解消された。選挙結果を受け、海外紙は安倍首相を3つのポイントから評価している。
1.日本の復活と自らの復活を重ねあわせた「イメージ戦略」の成功
安倍氏は、敗北から立ち直った自らの姿に、一時は世界を席巻する経済力を獲得しながら、長い低迷にあえいできた日本経済の姿を重ね合わせる「イメージ戦略」に成功した、と指摘。
2.古い自民党を打破する「改革」姿勢
安倍氏は、古い経済との固着を指摘されがちな自民党のイメージをも刷新しようとしている。これは単なる経済的な変革ではなく、「文化的な変革」を目指すものだと指摘している。
3.ナショナリストとしての一面をおさえ、経済に集中
安倍氏は、歴史認識や改憲についてのコメントを抑制し、経済再建に集中する姿勢を見せている。安倍氏は、「ナショナリスト」であると同時に「現実的・実際的」であるため、今後しばらくは、有権者の期待に応え、「経済復興」施策に集中するだろうと報じられている。
■「ナショナリズムより経済」海外紙が安倍首相を絶賛する3つのポイントとは?
■安倍首相を悩ます2つの抵抗勢力とは?海外紙が分析
■海外紙「日本人の半数は原発反対なのに、なんで自民党が勝つの?」
3.日本の経済
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アベノミクスが成功すれば日本だけでなく世界経済全体の復興につながると期待する。
ただし、経済規模の2倍半にも達している日本の政府債務急増を危惧している。成長を実現できなければ投資家は政府の返済能力を疑い始め、国債金利は上昇し、そうなれば日銀に国債を買わせ続けても、世界的ハイパーインフレに終わるという。
そのため同紙は、それまでに、アベノミクス「第2の矢(財政再建)」の残りである増税・支出削減の中期計画を固め、「第3の矢(構造改革)」を現在のような「臆病な対策」だけで終わらせず、女性の労働力参入、高齢労働者の解雇、農業やサービス分野の規制緩和などでもっと抜本的な改革を断行すべきだ と主張している。
■経済復興か、ハイパーインフレか・・・アベノミクスの成否を海外紙が予測
■消費増税でダメージ5兆円?
4.その他
【東電】
東京電力は22日、福島第一原子力発電所の観測用井戸から放射性物質が検出されている問題で、「汚染水が海に流出している可能性」を初めて認めた。ただ、今回の汚染が事故直後の放射性降下物が原因か、または他の原因で最近漏れたのかは不明だとしている。
東電は前の週に分析を終えていたにもかかわらず、公式公表を遅らせた。その理由として、21日の参院選が終わるのを待ったのではと指摘されている。
【麻生氏のナチス発言】
麻生副総理兼財務相は29日、国家基本問題研究所主催のイベントで、「ドイツのワイマール憲法はだれも気づかないうちにナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうか」などと語った。
麻生氏は1日、「真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾だ」と述べ、発言を撤回した。改憲については落ち着いて議論すべきであり、ナチスとワイマール憲法は否定的な意味で例示したと説明した。
ただ、麻生氏の意図するところが何にせよ、同氏の発言はとりとめがなく、異なる解釈につながる可能性があると指摘した。