ロックダウンで睡眠時間は増加、睡眠の質は悪化

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著:Jakke Tamminenロイヤル・ホロウェイ、Lecturer in Psychology)、Rebecca Crowleyロイヤル・ホロウェイ、Phd Candidate, Psychology)

 2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が広がり、一部の国でロックダウンが導入された状況の下で、多くの人が睡眠パターンの変化を感じた。ソーシャルメディアでは有名人が人々の眠りの手助けをしようと就寝前に聞かせるお話の録音を始めたほか、ツイッターでは#cantsleep(眠れない)が常にトレンドとなっていた。
 
 パンデミック宣言から1年が経過した今、私たちの睡眠がどのように変化したか、またそれが人々の健康にどのような影響をもたらしたかについて、睡眠専門家の理解も進むようになった。
 
 最近行われた2つの研究では、ロックダウンが導入されてまもない月にヨーロッパ南アメリカのボランティアの睡眠パターンを追跡した。共通する研究成果は、ロックダウン期間中に睡眠時間が以前と比べて増加したことと、就寝のタイミングが変化したことだった。
 
 いずれの研究でも、ロックダウンにより平日と週末の就寝時間の差(社会的時差ぼけ)が少なくなったことが判明した。ほとんどの人は週末と比べて平日は早く寝て、早い時間に起きるのが普通だ。だがロックダウン下では、平日の睡眠パターンは週末と同じようになってしまった。
 
 良好な睡眠とは時間だけの問題ではなく、質のよさも関係する。睡眠の質で考慮される要素には、就寝するまでの時間、夜中に目覚めた回数と寝起きの良し悪し、再び眠りにつくまでの苦労、朝起きた時の爽快さなどがある。
 
 ロックダウン下での睡眠を調査した最新の研究から得られた驚きの知見は、睡眠時間は長くなった一方で睡眠の質は悪化したというものだった。キングス・カレッジ・ロンドンで行われた最近のイギリスでの調査も、この知見を裏付けている。イギリス人の半分はロックダウン期間中に睡眠が妨げられたと報告しているほか、3割の人は睡眠時間が長くなった一方でゆっくり休めなかったとしている。
 
 睡眠の質が低下すると、それによって引き起こされる症状は疲労感だけにとどまらない。質のよい睡眠は、感染症を抑え込もうとする身体の免疫系にとって欠かせない。2009年に行われた重要な研究において、研究者グループは153人のボランティアを対象に睡眠パターンを2週間追跡し、風邪を引き起こすウイルスにさらすようにした。2週間にわたり睡眠の質が良くなかった参加者が風邪にかかる確率は、6倍ほど高かったという。
 
 睡眠の質と健康との関係は大規模な調査によっても確認された。そこでは3万人のボランティアが4年にわたって身体と精神の健康、睡眠パターンに関するデータを提供した。その結果、4年にわたる睡眠の質の改善が健康状態の改善に関係していることが示された。

◆スマートな睡眠
 睡眠の質が良好だと健康を維持できるだけでなく、心も明晰でいられる。2019年の研究では、マサチューセッツ工科大学の学生たちにフィットネス製品のフィットビットを貸与し、一定期間装着してもらう実験を行った。この端末で睡眠パターンを記録する一方で、研究者たちは学生の成績を追跡した。試験前日だけでなく1ヶ月にわたって長時間かつ良質の睡眠を確保できた学生の成績は、睡眠時間が短く睡眠の質もよくなかった学生と比べて優れていた。

 睡眠の質と成績との関係を説明する要因としては、日中に蓄えた記憶が睡眠により補強された可能性がある一方で、このプロセスが質の悪い睡眠により損なわれたということがある。2012年の研究では、質のよい睡眠をする人とそうでない人を対象として、就寝前と起床時に特定の並び方をしたボタンをたたくよう求めた実験を行い、この関係性が実証された。質のよい睡眠をした人の指の操作スキルは一晩で15%向上したのに対し、そうでない人のスキルはわずか1%しか向上しなかった。睡眠の質が悪いと、学業にも悪影響を与える。

 家から出られなくなった人たちが犬を飼い始めたり、深夜に大量のネット通販をしたりするなどといった衝動的な行動は、ロックダウン特有の現象である。これらは退屈しのぎが一因であるものの、睡眠も一部関係している。2013年の研究では、衝動的な行動をすることの多い思春期の若者の意思決定について調査した。睡眠の質がよくなかった若者は、質のよい睡眠を確保できた若者と比べて意思決定のスキルが低く、ギャンブルではリスクの高い判断をしていた。

◆よりよい睡眠を
 睡眠の質を向上させるのに効果的な方法があるというのは朗報だ。睡眠科学の専門家集団がお薦めリストを公開している。睡眠スケジュールを定期的に記録する、ベッドではZoom会議を含め寝ること以外の活動をしない、就寝前に電子機器を使用しない、定期的に運動し、特に午前中はできるだけ多くの日光を浴びることなどが書かれている。

 ロックダウン前、自身の睡眠に満足しているイギリス成人の割合は44%にすぎなかった。人によっては就業時間や日々の通勤という制約から解放されたため、ロックダウンで睡眠時間が増えた可能性がある。

 一部の人にとっては睡眠時間が増えるという夢が現実になったものの、期待していた類の眠りではないのかもしれない。睡眠の質の向上に注力することは重要である。知性に磨きがかかり、健康的な生活を送れる可能性があるのだから。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by The Conversation