睡眠でお悩みですか? 伝統的な睡眠改善法3つを科学的に解明
著:Nenad Naumovski (キャンベラ大学、Associate Professor in Food Science and Human Nutrition)、Amanda Bulman (キャンベラ大学、PhD Candidate)、Nathan M D’Cunha (キャンベラ大学、PhD Candidate)、Wolfgang Marx (ディーキン大学、Postdoctoral research fellow)
健康に欠かせないのが、睡眠だ。睡眠の質が悪かったり、睡眠不足だったりすると、気分や認知機能、さらに免疫系にも悪影響を及ぼす恐れがある。
睡眠はストレスによる影響を受けると言われており、新型コロナウイルス感染拡大でストレスや不安感が増したということは、以前よりも睡眠が妨げられているということになる。63ヶ国で2555人を対象に実施された調査では、パンデミック時に「普段と比べて睡眠不足になった」と回答した人は全体の47%に上り、それ以前の25%と比べて大幅に増加した。
また、ストレスは食生活に関連していることもわかっている。ストレスや疲労を感じている人は、栄養ドリンクやカフェイン入り飲料を多く摂取する傾向があるが、カフェインや砂糖で甘みを増した栄養ドリンクを大量に摂取すると覚醒して眠れなくなり、悪循環に陥ってしまう。
同様に、ストレスを感じている人はアルコールの摂取量も多くなりがちだ。就寝前の飲酒(飲みすぎの場合はとくに)睡眠を妨げる恐れがある。
では、何を飲めば睡眠が改善されるのだろうか?
◆カモミール
伝統医学では何世紀にもわたり、不眠症などの睡眠障害の治療にカモミール茶が用いられてきた。カモミールの抽出物に含まれるアピゲニンには、不安神経症や不眠症の治療薬であるベンゾジアゼピンと同じ脳内受容体と結合する性質があるため、鎮静作用がある。
複数の研究によって、カモミールの抽出物、あるいはカモミール茶を摂取することで睡眠の質が大幅に改善することが明らかになった。
ただ、エビデンスは肯定的であるものの、これらの研究は比較的小規模であるため、その観察結果を補強するためにはさらに大規模で良質な臨床試験が必要だ。
◆牛乳
欧米文化で就寝前の飲み物(特に子ども向け)、といえばホットミルクが人気だ。
人間の体では、脳内分泌されるセロトニンやメラトニンなど、いくつもの化合物が生成されており、牛乳にはそのために必要な必須アミノ酸の一種であるトリプトファンが豊富に含まれている。これらの化合物は睡眠と覚醒のサイクルに関与しており、牛乳が我々の睡眠の質を改善してくれることの根拠になっている。
科学者たちは何十年もの間、牛乳と乳製品(ヨーグルトやチーズなど)が睡眠の質に及ぼす影響を研究してきたが、いまだに明確な証拠は見つかっていない。
牛乳自体が持つ化合物ではなく、単に「就寝前に温かいミルクを飲む」という儀式そのものが脳や体をリラックスさせるのかもしれない。いずれにしろ、決定的な理由が見つかるまでにはさらに多くのエビデンスを研究する必要がある。
◆ココア
ホットココア(牛乳に溶かすことが多い)もまた、睡眠を促進する飲み物だと考えられる。カカオ豆にはフラボノイドと呼ばれる化合物など、人体に有益な化学成分が豊富に含まれている。
フラボノイドには幅広い健康上の効能があるとされ、複数の神経変性疾患の治療に用いられることもある。
「ココアが睡眠の質に及ぼす影響」に関する研究は多くない。しかし、マウスを使った研究では、天然のカカオがストレス誘発性の不眠症を改善する可能性があることが示唆されている。
人間の場合、ココアを摂取すると血圧低下作用がある(健康な人と高血圧の人の場合)。これは動脈を覆う平滑筋を弛緩させる効果によるもので、心が落ち着き、眠りにつきやすくなると考えられる。
これらの睡眠改善法が有害となる可能性は低いものの、その効果を実証するエビデンスは不十分だ。試してみる価値はあるが、それだけですぐに睡眠の質が改善すると期待しない方がいいだろう。
結局のところ、我々の睡眠の質には画面視聴時間や運動、ストレス、食生活など、複数のライフスタイル要因がかかわっている。
常に睡眠に悩んでいるという方は、一度かかりつけ医に相談することをお勧めする。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac
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