長引くパンデミックで心が落ち着かない機会が増えたとしても――そこにある利点は?

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著:Jennifer Windtモナシュ大学、Senior Research Fellow)

新型コロナウイルスのパンデミックが、私たちの日常生活だけでなく、私たちの内面の精神生活にまで変化を与えたと多くの人が感じている。その影響はメンタルヘルスへの悪影響だけにとどまらず、覚醒時に起こる「ブレインフォグ」や、睡眠時に見る奇妙で鮮明な夢についての報告も寄せられている。

私たちは、起きているときの生活と夢の中での生活は別々のものだと考えがちだ。だが実際には、その二つは驚くほど深く結びついている。

自発的な思考、つまり「マインドワンダリング」が行われている時間は、私たちが起きている時間の最大50%を占めている。私たちの思考と意識のフォーカスは、しばしば、自分たちがいまやっていることや、すぐそこでいま起きていることから離れて、とめどない連想へと移行していく。

自発的な思考と経験は、睡眠時にも影響を及ぼす。その端的な例が、夢だ。夢は、私たちが目覚めているときに生じる心の彷徨、いわゆるマインドワンダリングが、より極端な形をとったものだと理解されている。

夢とマインドワンダリングをひとつのものとして考えた場合、そこから示唆されるのは、自発的な思考がもたらす経験の変動、つまり意識のフォーカスの自然な満ち引きや流れと、覚醒時にも睡眠中にもとりとめもなく続いていく連想だ。

普段の状況下では、ほとんどの人が、自分自身の心がさまよっているということ自体に無自覚だ。また多くの人は、夢の内容をほとんど覚えていない。しかし、そういった人たちに対して研究室で睡眠調査を実施してみると、実際に彼らは一晩で複数の夢を見ていることがわかる。マインドワンダリングと同様に、夢も一部の明晰夢をのぞいて、その大部分を本人はコントロールすることができない。

しかしながら、日々の生活の中での意識のコントロールが散漫な時期にも、精神生活に対する意識のフォーカスを強化することは可能かもしれない。

まず、朝起きてすぐに夢に注意を傾けると、夢を思い出せる割合が飛躍的に高まる。また一日を通して思考と意識のフォーカスを保とうと試みることで、私たちは、注意が散漫になることを含め、ふだん自分自身が犯している心の過ちに対し、より自覚的になれる。つまり、パンデミックの期間中、あなたが自分自身の自発的思考にもっと注意を向けていれば、その間ずっとそこにあった思考の中身に対して、より自覚的になれていたのかもしれない、ということだ。

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◆自発的思考の変化——良くも悪くも
もしロックダウン中にあなたの睡眠時間がそれまでよりも延びたのなら、おそらく早朝のレム睡眠の時間も延びている。レム睡眠は、鮮明で複雑な夢とのつながりがとくに深い。したがって、レム睡眠の時間が延びたことにより、あなたが実際に見る夢も増えている可能性がある。

目覚ましのアラームをセットせずに寝た場合には、あなたはレム睡眠から直接目覚める可能性が高い。この場合、夢を覚えている割合はさらに高まる。

またパンデミックによって、私たちが空想する内容や夢の中身も変わってしまった。目覚めている時間に私たちがパンデミックに対して抱く懸念は、悪夢を見る頻度や社会的距離・ウイルス感染・マスクなどの防護装備に関わる夢を見る頻度の増加とリンクしているようだ。

自発的な精神生活における一部の変化が、何らかの不調の表れであることもある。実際に、不安とストレスによって、何度も繰り返し同じことを反芻する思考パターンの増加がもたらされ、集中力低下や睡眠障害、悪夢や不快な夢などがパンデミック期間中を通じて増加しているようなのだ。

これらの反復的でしつこいネガティブな思考は、夢やマインドワンダリングの本来的な特徴である自由奔放な挙動とは対極に位置するものだ。

◆自発的思考がもたらす潜在的効用
しかし、私たちの心の不安定な挙動には、ポジティブな面もあるかもしれない。もちろんマインドワンダリングが、集中力を要とするタスクの実行精度を損ねることは確かだ。その一方で、夢およびマインドワンダリングは、異なるイメージを結びつける性質を持っている。それによって新たな発想のコネクションが生まれ、見慣れた話題を新たな視点から俯瞰できるようになる場合もある。心がさまよっているとき、私たちの思考は未来や個人的な懸念事項にフォーカスしていることが多いのだ。

また、夢はあなたが起きている時間中の異なる経験や懸念事項をひとつに融合させて、新しく、ときには奇妙なストーリーとして描き出す傾向がある。あなたが夢の中で出会うその人物は、じつはあなたがこでまでの人生で異なる時期に親しかった別々の人物をミックスして成立したキャラクターかもしれない。

また別の場合には、遠く離れた街に住む友達を訪ねるという楽しい夢が、いつの間にか悪夢に変容することもある。そこではあなたはウイルスに感染して家族を危険にさらし、ロックダウンの規則を破って警察に追われる。

覚醒時と睡眠時の自発的思考は、記憶の処理を促し、たとえばいくつかの異なる行動パターンを想像する力を与えるなど、あなたが未来についての計画や意思決定を行う際の助けになるものかもしれない。またその思考は、洞察力と創造力の源にもなりうる。

その思考はさらに、問題への対処と感情の処理にも貢献するかもしれない。マインドワンダリングが未来を見ている場合には、それがポジティブに働くことも多い。それに対し、過去を見ている場合にはネガティブな気分や感情を引き起こしがちだ。

◆大いなる逃避
私たちはマインドフルネス(いまここにいる意識を強化する一種のメンタルトレーニング法)を通していまこの瞬間に意識を向けることが大切だ——そのように語られことが多い。しかしときには、心が散漫であること自体がむしろ役立つシーンもある。マインドワンダリングは、退屈な雑事を離れて心に休憩をもたらす。そしてそこから戻ったときには、心はリフレッシュし、注意力が増した状態になっている。

また、心が散漫であることが、心地よい体験につながることもある。夢の中では、私たちはもう一つの現実を経験する。私たちは夢を自由に旅することができ、そこでは人々との社会的交流も活発だ。目覚めているときには遠く隔たっている人たちとも、夢の中では会って話したりもできる。

現在私たちの多くは、単調な日々に退屈し、各種の規制に縛られ、社会的に孤立している。そういった状況下では、私たちの心がもつ脈絡のなさと自由奔放さは、ときとして我々に大いなる逃避の機会を与えてくれる大切な機能だといえるのかもしれない。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated via Conyac

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