失われた睡眠時間を取り戻すために覚えておきたいテクニック11選
著:Deepa Burman (ピッツバーグ大学、Co- Director Pediatric Sleep Evaluation Center and Associate professor of pediatrics)、Hiren Muzumdar (ピッツバーグ大学、Co-director, Pediatric Sleep Evaluation Center)
アメリカでは、2020年3月8日からサマータイム(Daylight Saving Time: DST)が始まる。そこで大いに気になるのは、睡眠時間が減ることと、この変化に順応する方法だ。
1時間くらいで大騒ぎする必要はないように思えるかもしれないが、睡眠不足が世界的に広がっていることを考えると、このわずかな損失が重大な問題をいくつも引き起こす可能性がある。強制的に体内時計の時間を早めることで、健康に深刻な影響が生じるのだ。
春に進めるのは、得てして秋に戻すより難しい。それはなぜだろうか。
ヒトに生来備わっている体内時計と概日リズムは、1日24時間よりやや長いため、就寝時刻を遅らせる傾向がある。つまり、「春に進める」のは、その自然のリズムに反しているのだ。時間が減り、1時間早く眠るのに苦労する状態は、アメリカの東部へ旅行したときに起きる軽い時差ボケに似ている。
私たちは、ピッツバーグ大学医療センター(University of Pittsburgh Medical Center: UPMC)内ピッツバーグ小児病院(Childrens’ Hospital of Pittsburgh: CPH)の睡眠評価センター長として、さまざまな睡眠障害の患者さんを受け入れている。この病院には、睡眠不足の影響で苦しんでいる患者さんが多く来院する。睡眠と覚醒のプロセスの仕組みを熟知している私たちは、患者さんの状態をよく理解することができる。
◆睡眠不足はさまざまなリスクを引き起こす
睡眠不足によって心臓発作、脳卒中、高血圧のリスクが高まることが、現在多くの研究で証明されている。労働災害が増加し、自動車事故も増加する。睡眠不足の影響は子どもたちにも及び、遅刻するとわかっていてもなかなか起きられない。
サマータイムがもたらす睡眠不足と体内時計の時刻の変化に対処するために、私たちにできることはあるのだろうか。
もちろん、解決策はある。まずは認識を深めて、知識の力でこの問題に取り組む必要がある。そこで、簡単に実行できる11の対処法を紹介しよう。
1. 「睡眠負債」を解消しよう
毎年、サマータイムが始まる前の数週間で、規則正しく十分な睡眠をとれるようにしよ。十分なパフォーマンスを挙げるために、一般的な成人に必要な睡眠時間は1日7~9時間だ。子どもの場合、年齢によって必要な睡眠時間が異なる。
2. 時間の変化に備えよう
サマータイムが始まる前の週から、毎晩15~20分早く寝る(子どもを寝かしつける)ようにするのだ。その週は早く起きるようにすると、早く眠れるようになる。サマータイムが始まる前日には1時間早く起きることを目指すとよい。
3. 光を活用しよう
光は体内時計の調整を助ける最強の合図だ。できれば、朝目が覚めたとき、明るい光を浴びるのがよい。朝、自然光が入らない場合は、照明をつけて、早く目覚めるよう体内時計に信号を送ろう。季節が変わると日の出が早くなるので、光の恩恵を受けやすくなるだろう。反対に、夜はなるべく明るい光(特に電子メディアの画面から発せられるブルーライト)を浴びないようにする。一般に推奨されている時間(就寝の1~2時間前)よりも早く電子機器の電源を切るべきだ。就寝時に寝室に日光が入るような環境では、遮光カーテンが有効である。
4. 日中と夜間の行動を慎重に計画しよう
サマータイム開始前夜はぐっすり眠って、気持ちも新たに1日の計画を立てよう。
5. 運動は朝にして、リラックスできることを夜にしよう
こうすることで1日の疲れを癒すことができる。家や職場の中でもいいので、歩くようにしよう。
6. 早めに寝たり電子機器の電源を切ったりするために、アラームをセットしよう
7. 高たんぱく質の朝食を摂ろう
睡眠が不足すると食欲が増し、炭水化物の多い食品や糖分を欲するようになる。
8. 正午以降はカフェインを摂取しない
9. 成人は、寝酒をほどほどに
10. 子どもがサマータイムに慣れるまで気長に見守ろう
言わずもがな、睡眠不足は家族全員に影響を及ぼす。子どもも大人と同じで、この変化に戸惑うのだ。周囲より適応するのに時間がかかる子どももいる。感情をコントロールできない、怒りっぽくなる、注意力や集中力が散漫になるなどの様子が頻繁に見られるかもしれない。サマータイムに慣れるまで、夜間に電子メディアを使わないで静かに過ごす時間を増やすか、昼下がりに20分くらい仮眠をとるようにしよう。
11. 電子機器を賢く使おう
テレビ、スマホ、タブレット、ビデオゲームは、私たちが住む世界に潜む脅威だ。テクノロジーによって人々がつながり続けるという利点がある一方、就寝前や寝室での利用は睡眠の妨げになりかねない。電子機器が発するブルーライトは、翌日の目覚めを遅らせる信号を体内時計に出し、体内時計のリズムを変えてしまう。電子機器の使用は、自然な睡眠と覚醒のリズムと健康を維持するために取り組み続けなければならない現代の課題である。
国立睡眠財団(National Sleep Foundation)が定める睡眠啓発週間(Sleep Awareness Week)が、今年は3月8日から14日まで実施される。1日の計画を立てる際は、今年のテーマ「睡眠から始めよう(Begin with Sleep)」を遵守しよう。一晩ぐっすり眠れば、充実した有意義な1日を送れること請け合いだ。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Naoko Nozawa
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