食、絶景、酒…東北の魅力をCNNが大特集、観光庁が後押し 「知られざる日本」に熱い関心

 訪日する外国人観光客が増え続ける中、「伏見稲荷大社」「広島平和記念資料館」「厳島神社」といった定番の人気スポットだけでなく、知る人ぞ知る“ unknown Japan”を探す日本通も増えているようだ。これに呼応するように、観光庁は、比較的外国人観光客が少ない東北の魅力を全世界に発信する『東北デスティネーション・キャンペーン』を実施中。早速CNNがまだほとんど世界に知られていない東北の絶景スポットやグルメを紹介している。また、大手旅行サイト『Trip Advisor』は今年の「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」を発表。ここにも、秋葉原のフクロウカフェといったディープなスポットがランクインしている。

◆客足が伸びない「東北」をアピール
 今年1〜5月の訪日外国人客数は972万8200人(推計値)で、昨年同期比で29.1%増。まさに日本観光ブームもピークに達したかという勢いだが、そうなってくるとリピーターや旅慣れた個人旅行者も多い成熟市場になってくるのは世の常だ。日本を好きになってくれる人が増えれば増えるほど、未知の日本に目が向けられてゆく傾向は強まるだろう。

『東北デスティネーション・キャンペーン』は、東日本大震災から5年という節目で観光復興を目指す意味合いが強い。同時に、日本観光ブームがピークに達しつつあるという大局的な視点に立つと、政府が今「知られざる東北」をプッシュしているのも頷ける。「日本では初となる全世界を対象としたデスティネーション・キャンペーン(一つの地域に集中した大規模な観光宣伝キャンペーン)としてグローバルメディアによる情報発信や海外メディア・旅行会社の大規模招請等の東北のプロモーションを実施します」と謳われている。

 観光庁によれば、東北の観光は全国的な訪日客急増の流れからは大きく遅れている。全国の外国人延べ宿泊者数が震災前の2010年比で235.1%まで伸びているのに対し、東北6県は101.0%とようやく震災前の水準を回復したところで、福島はいまだに50.5%に留まっているという。震災、特に原発事故の影響は、今なお色濃いということであろう。

◆知られざる東北グルメとは?
 キャンペーンを受けた情報を発信している海外メディアの1つがCNNだ。webサイトの旅行特集の中で、東北の「食」「酒」「絶景スポット」「土産」などを紹介している。

「食」の項目では、「寿司、ラーメン、カレー、餃子」ではない『聞いたことがないであろう8つの日本食』として、東北の郷土料理である「しそ巻き」「ひっつみ汁」「はらこ飯」「カキの土手鍋」「みちのくこけし弁当」「おにぎり」「松の実の白和え・柿器」「鮭の昆布巻き」が紹介されている。CNNは、和食には「各県ごとの地域的なバリエーションがあり、その多くはまだグローバルなメニューにはなっていない」と、その奥深さを表現している。紹介しているメニューは、米国人和食研究科のエリザベス・アンドウさんの著書からピックアップしたものだ。

「絶景スポット」には、「浄土ヶ浜」(岩手県)、「御釜」(宮城県)、「鳥越の滝」(岩手県)、「あぶくま洞」(福島県)といった日本人でも未見な人が多そうな東北の自然が、美しい写真と共に「東京のまばゆい光と賑やかな夜に勝るものはない。しかし、自然の美しさとなると東北を抜きには語れない」と紹介されている。「土産物」には、ビートルズも持ち帰ったという定番の「こけし」のほか、「曲げわっぱ」「津軽漆器」「南部染め」といった伝統工芸品をピックアップ。また、山形県の「山寺」と仙台の「牛タン」は別記事で特にフィーチャーされている。

◆ワースト1は「六本木」
 先月には、毎年恒例になっているTrip Advisorの「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」の2016年版が発表された。トップ30のうち、今年は10のスポットが新たにランクイン。昨年8位だった「サムライ剣舞シアター」(京都市)が5位に上がり、「箱根彫刻の森美術館」(11位・神奈川県)、「ギア専用劇場」(28位・京都市)といった有名観光地から少し足を伸ばして行くような、なかなかマニアックなスポットも入っている。

 新たにランクインした「アキバフクロウ」(9位)は、オタクの聖地・秋葉原にあるフクロウカフェで、最近は「猫カフェよりもさらにユニークな体験を」と、予約制の隠れ家的なスポットにもかかわらず、外国人観光客が押し寄せているという。Trip Advisorの口コミには「最高の癒やし空間」「まるで童話の世界」といったコメントが寄せられている。

 一方で、物事を深く知れば知るほど悪い部分も見えてくるのが世の常だ。日本情報サイト『Japan Today』は、米ソーシャルニュースサイトRedditに寄せられたコメントを基準にまとめた「日本のワースト5」スポットを既に3年前の段階で発表している。1位は六本木で、在住外国人のたまり場になっていることから「観光客には価値のない場所」という意見が多いようだ。2位の東京ディズニーリゾートはあまりの混雑具合が敬遠される傾向にあり、基本的に中には入れない皇居が観光客にやさしくない場所として3位にランクイン。4位の札幌時計台はロンドンのビッグ・ベンなどに比べて非常に控え目であることから期待外れの「ツーリスト・トラップ」だとされている。そして、伝統的な日本を求める層は「東京」(5位)自体にネガティブな印象を受けるようだ。

Text by 内村 浩介