BABYMETALオランダ公演、往年メタラーも唸らせた神バンドの超絶演奏 プロ意識も絶賛

 もともと好奇心旺盛で、「面白いもの」「楽しいもの」「評判がいいもの」に対して、何の抵抗もなく受諾するのがオランダ人気質だといわれる。特に若年層にはその傾向が強い。今や、フェノメノン(現象)と呼ばれるほどビッグになったBABYMETALが、6月5日オランダに初見参、その実力ぶりを発揮し、彼らの好奇心を十二分に満足させてくれたようだ。

◆ヘヴィメタルに対しては保守的
 へヴィメタルは、「硬派」「男子系」のイメージがつきまとうジャンルだが、オランダでもそれは同様である。世間では男女同権を声高に叫ぶお国柄だが、へヴィメタルに関してはいまだに女人禁制というべきか、聖域カテゴリーに属す音楽といえなくもない。

 今回、BABYMETALが出演したのはFortaRockという毎年恒例の野外フェスだ。開催地はオランダ東南部の街・ネイメーヘン。街の中心部は、ドイツとの国境からもわずか5キロということもあり、国境を越えてドイツのメタラーたちも押し寄せる、夏の風物詩的イベントである。(ちなみにこのネイメーヘンは、かのハード・ロック・バンド「Van Halen」の主要メンバー、ヴァン・へイレン兄弟(オランダ語読みでは、ファン・ハーレン)の出身地で、穿って考えれば、もともとへヴィな音楽が生まれる土壌があった、といえるのかもしれない)

◆ラウドネス以来の快挙?
 集まったメタラーたちの約9割はやはり男性だった。50代から60代の筋金入りメタルファンと、20代から30代くらいまでの次世代のメタルファンたちが肩を並べて参加していたのが印象深く、父子が同じジャンルの音楽について語り合い、意見を戦わせる様子もあちこちで見られた。

 それでは、彼らによるBABYMETAL評はいかがなものか。正直なところ、筋金入りメタラーたちからの下馬評は最高とは言い難かった。特に1980年代、へヴィメタルが社会現象を引き起こすほど人気を博していた頃からの熟年メタラーたちにとっては、日本を代表するメタルといえばラウドネスであり、バリバリ・メタル正統派といったイメージをいまだに強く持っている人が多いのだ。

 しかし、アメリカや他のヨーロッパ諸国の若年層ファンたちの度肝を抜いたのみならず、完全に虜にしたというBABYMETALの実力と評判をぜひ、我々の眼で確かめようじゃないか、という好奇心に駆られて、その出場を心待ちにしていた人がほとんどだったのも確かである。

 また、すでにYoutubeなどを通じてBABYMETALの洗礼を受けている10代のファンたちには、女性が多かったのが印象的だ。彼女たちはBABYMETALを「カワイイ・メタル」と称し、硬派なメタルを身近に感じさせてくれた功績は大きいと分析している。男性に押され気味のメタル界の土俵で、超一流のバンドを伴って堂々と戦えるだけの実力を兼ね備えている、と絶賛しきりだ。

◆超絶・神バンドと堂々の凱旋
 さて、コンサートが開始され、少々引き気味だった往年のファンたちを驚愕させたのが、バック(と表現することは失礼に当たるが)の神バンドのすごさだ。何がすごいのかというと、演奏テクはいうまでもないが、そのプロ意識が超人的、と大絶賛だった。演奏に集中しながらも、オーディエンスを飽きさせない熱のこもったパフォーマンスを見せつけた彼らこそ、超一流と呼ばれるにふさわしいのだという。

 それでは、神バンドをひとことで表現すると?と、老若メタラーたちに質問したところ、「完璧」、「才能」、「超絶」、「ユニーク」、「驚異」それが神バンド!と、誰もが興奮気味に形容。さらに、各メンバーの音楽的背景や略歴などを知りたがるメタラーも多く、「日本人アーティストが、またしてもやってくれた!」と惜しみない賞賛を送る脱帽ぶりだった。

 往年のヘヴィメタルファンをも魅了した超絶テクを披露した神バンド、そして歌唱力と表現力の豊かさで若年層を虜にしたBABYMETAL。この絶妙なコンビネーションに圧倒され、文句なし!と惜しみない拍手を送ったオランダのメタラーたち。BABYMETALって、どんなバンドなんだろう?という彼らの好奇心を十二分に満足させ、下馬評をはるかに上回る実力を見せつけ、見事に初凱旋したといえるだろう。

Text by カオル イナバ