ミランダ・カー、“ゲイシャ”姿でVOGUE 表紙 「白人による文化の盗用」と一部で物議

 雑誌『VOGUE JAPAN』の創刊15周年アニバーサリー企画として、オーストラリア出身の人気モデル、ミランダ・カーが芸者姿に。しかし、そのことが「文化の盗用(cultural appropriation)」ではないか、との物議もかもしている。

【VOGUE JAPANスタイルのゲイシャ?】
 9月27日に発売された『VOGUE JAPAN』の11月号では、15周年記念の特集としてミランダ・カーが「ゲイシャ、サムライ、マンガ」がテーマのコスチュームを装い、故ダイアナ妃やイギリス王室に愛された写真家マリオ・テスティーノが、それを写真に収めている(ラテン・アメリカン・ヘラルド・トリビューン)。

 表紙の写真では、ミランダは、日本人からすると一見して芸者とはわかりづらい”ゲイシャ姿”だ。ごってりと結い上げた真っ黒な髪、カラフルな羽のコートの下によく見れば着物が見える。

 サムライの写真では、肩に現代的なコートをまといつつ、鎧の胴丸、伝統的な模様の袴に革足袋で勇ましいポーズを取る、ちょんまげを模した髪型のミランダ。

 マンガのページでは、初音ミクを彷彿とさせる真っ青な色の、深く切れ込みが入った胸元から胸の谷間がちらりと見えるミニドレスにポニーテールがはためいている。

【好評も批評も巻き起こしたゲイシャ・スタイル】
 イギリスのデイリー・メールやオーストラリアのナインMSNでは、「セクシー」や「カワイイ」との評を得ているが、「白人が非白人の文化を”借りて”くる」(カンバーセ―ション・オーストラリア版)という「文化の盗用(cultural appropriation)」の例でないか、という議論が巻き起こっている。

 9月19日付けでアメリカのデイリー・ニューズが、表紙の写真を評して「文化の盗用? ミランダ・カーはVogue Japanの表紙で芸者にインスパイアされた装いをまとった時、議論を巻き起こすことを恐れてはいなかった。」と伝えると、編集者や識者による情報分析サイト・カンバーセーションのオーストラリア版は、9月29日の記事で、白人による「文化の盗用」について議論を発展させている。

 カンバーセ―ションは、「文化の盗用」の問題として、白人は気ままに差別の意識もなく、非白人の文化をまとえるし脱ぎ捨てることもできるが、当の文化に生まれ育ったものは、脱ぎ捨てようともそうはできないこと、また、総体的な文化が単なるファッション・アイテムなどに集約されてしまうし、本来は神聖な意味を持つ物もその神聖さを失ってしまうことを挙げている。

【日本人は「文化の盗用」に無自覚?】
 しかしながら、カンバーセ―ションは、ミランダ・カーの文化的盗用のケースが、盗用される文化の当事者である日本人を読者としていることも重要な点であることを指摘。

 さらに、日本がまさに「西洋文化の盗用」のエキスパートであると述べ、文化やメディア論の学者である岩渕功一の言葉「日本は、アジア化された西洋が全アジア市場向けに形作る”変革者”として機能している」を引用している。

 また、シドニー・モーニング・ヘラルドは9月22日の記事で、「リプトン・アイス・ティーの変わった広告から、洗濯洗剤のCMやリーボックの販促まで、カーは日本で人気となっている。おそらく、だからVogue Japanは彼女を雑誌の特別号で用いることを決めたのだろう」と述べている。

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Text by NewSphere 編集部