ひげのドラァグクィーンがEU歌唱コンテストで優勝 “反同性愛者プーチンへの非難か”と海外紙報道

 10日、欧州国別対抗歌謡祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」で、オーストリア代表のひげ面女装歌手、コンチータ・ウルストが優勝した。

 「この夜を、平和で自由な未来を信じる全ての人達へ捧げます。」とトロフィーを受け取ったウルストは涙ながらに語った、とテレグラフ紙は報道している。

 ウルストのもう一つの姿は、25歳のトム・ノイビルトである。

 ユーロビジョンでトランスジェンダー歌手が優勝したことは今回が初めてではない。実は1998年にも、イスラエルのトランスジェンダー歌手が優勝している。

 ヨーロッパの政治的緊張の中、ウルストの優勝は、進歩主義に対するヨーロッパの決意表明とも読み取れる、とニューヨーカー誌は分析している。

【進歩主義対保守主義の争い】
 ウルストの優勝は、ロシアのプーチン大統領の「同性愛プロパガンダ禁止法とその支持者達に対する強い非難表明」とニューヨーカー誌は指摘している。

 オーストリア大統領ハインツ・フィッシャーは、「これはオーストリアの勝利というだけではなく、ヨーロッパの多様性と寛容の勝利」と述べた、とCTV Newsは報道している。

 一方、ロシアのドミトリー・ロゴジン副首相は、ツイッターで、「ユーロビジョン」の結果は「欧州統合を支持する人々に、『ひげを生やした小娘』という欧州の未来の姿を示した」とつぶやいた。

【海外の反応は賛否両論】
 ウルストの優勝に関し、海外ユーザーの反応も賛否両論あるようだ。テレグラフ紙には以下の様な好意的なコメントが寄せられた。

・ウルストが優勝した時、社会の古臭いものが死んだ。不寛容、憎しみ、そして差別が断末魔の叫びをあげている。

・コンチータ・ウルストが優勝してうれしい。ウルストは変わっているけど、美しい。受賞スピーチで、社会が非常に寛容になった、と述べたのは感動的だった。

 一方、ドラァグ・クイーンの優勝に対して不快感を示すコメントも数多く寄せられた。

・社会は内部から腐ると言う。ウルストの優勝はそれを証明している。

・道徳は下水に流され、報道機関とネットにはわいせつがあふれている。不道徳になればなるほど歓迎される。

・純粋に歌のクオリティーの高さで優勝するならいいが、ウルストの優勝は政治的な面が濃い。
 
 ウルストの勝利は、ヨーロッパの文化的溝がそれほど深くないことを示している、とニューヨーカー誌は指摘している。ウルストは、伝統的左翼国家であるオランダとほぼ同じ票数を、イタリアやスロベニアのような保守的国家から集めた。CTV News によると、ロシアの視聴者投票の人気歌手第三位は、ウルストであった。

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Text by NewSphere 編集部