“フードポルノ”に三ツ星シェフが苦言 「知的財産の侵害」か最高の宣伝方法か

 “フードポルノ”とは、見た人の食欲を掻き立てる食べ物画像のことで、昨今、レストラン等で撮影した料理写真をソーシャルメディアに投稿する行為が一般的に行われている。レストラン側としては最高の宣伝になると歓迎する声がある一方、行き過ぎた撮影マナーの悪さに一部の料理人は苦言を呈しているという。海外メディアではそれぞれの見解を紹介している。

【仏シェフたちの苦言】
 英テレグラフ紙によると、仏一流レストランのグループが、“フードポルノ”のトレンドやスマートフォンでの写真撮影の禁止に向けて動き出した。仏レストランシェフ、アレクサンドル・ゴーチエ氏は、「写真を撮影しソーシャルメディアに投稿やコメントしている間に、料理は冷めてしまう」と、地元紙に苦言を呈した。撮影されることは光栄である一方、時と場所をわきまえるべきだと指摘する。レストランのメニューにカメラ禁止のマークを導入することによって、客に問題提起しているという。

 仏南部の町にある三ツ星レストランシェフ、ジル・グージョン氏も、客の気分を害さないような方法で写真撮影を禁止することを検討している、とテレグラフ紙は報じた。「写真が共有されると、皆が料理を見たときの驚きがなくなってしまう」と語る。「誰かに真似されることを考慮すれば、知的財産の侵害でもある」とも批判した。

【英、米でのシェフたちの反応は賛否両論】
 NYでも、椅子に立ち上がって写真を撮ったりする客に業を煮やしたレストランがスマートフォンを禁止した。英メール・オンライン紙によると、ロンドン市街の二ツ星レストランのヘッドシェフMichel Roux Jr氏は、「周りのひとの迷惑になり、食事の楽しさを台無しにしてしまう。非常にマナーが悪いと思う」と語る。

 一方で撮影を評価する声もある。テレグラフ紙では12月にパリにレストランをオープンしたDavid Toutain氏を紹介している。氏は「時代とともに変化すべき」で、宣伝するという点において、ソーシャルメディアはキャリアのスタートから今までずっと力になってくれていると評価した。またBBCニュースでは、写真撮影用のコースを提供しているレストランもあるほどで、すべての高級レストランが同じ見解ではないという具体例を挙げた。

【海外や日本国内における読者の反応】
 メール・オンライン紙に寄せられた意見には、撮影する権利を主張する一方で撮影時のマナーを問う声が聞かれた。
・極端にマナーが悪くなければ、購入した商品として料理の写真を撮ることは問題ない。高級レストランに行くのは特別な日なのだから一部始終を記録しておきたい。
・美しい芸術作品を写真に残したいと思うのは自然。
・さっと写真を撮ることはなんの問題もないが、写真をとってそこから30分ほども携帯を操作していっしょに食事に来ている人のことを無視するのは論外。

 日本国内では、理解を示す意見がある一方、写真を撮ることの意味を疑問視する見方もあった。Yahooニュースには次のようなコメントが寄せられた。
・食べてこその料理。写真にすることにどんな意味が?
・日本人としては品のない行為だと思う。料理は一瞬の芸術ではないか。
・写真を撮るのは自由だが、写真を撮るマナーが悪く周りが迷惑する。
・美しい風景を写真に収めるのと同じように美しい料理を写真にするだけ。SNS中毒なわけではない。
・店の意向に従うのがベストだが、料理写真の共有も食事中の会話と同じように楽しみ方の一つでは。

 国内外に共通して問われているのは、写真撮影の善し悪しよりも撮影時のマナーと撮影の目的であるようだ。

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Text by NewSphere 編集部