世界でじわり“日本酒ブーム” 10年で対米輸出2倍、酒蔵も建設

【日本酒ブーム?】
「海外で日本酒がブームになっている」という話をちらほら聞きますが、日本にいるとそれほど実感がないもの。確かに日本酒の輸出量の変化を見ると、2001年からほぼ毎年右肩上がりに伸びており、2001年は7052キロリットルだったのが、2012年は1万4131キロリットルと11年間で約2倍に増加しています。

 では実際、日本酒はどのくらい浸透し、どのように親しまれているのでしょうか。

【寿司よりもチーズ】
 まず清酒の最大の輸出先で、11年間で輸出量が倍以上に増加しているアメリカはどうでしょうか。実はもう既に現地の人の手によって日本酒が生産されています。現在アメリカでは6つの酒蔵が存在し、それも最初に作られた酒蔵SakeOneは90年代から生産を行っています。

 米紙「The Post and Courier」によると、このSakeOneのあるオレゴン州ポートランドでは、年に一度「酒フェスティバル」が開かれるとのこと。また、普段から日本食以外のレストランでもワインリストに日本酒が載るほど人気があり、日本酒は寿司よりもチーズに合うというのが常識だそうです。

【ワイングラスで乾杯】
 日本酒とチーズとは意外ですが、飲み方についても海外流の飲み方があるようです。米CNNの「入門者向け」日本酒紹介記事の写真では、男性がワインのようにボトルの底を持ち上げ、ワイングラスに日本酒を注いでいる写真が掲載されています。日本人には違和感があるかもしれませんが、日本酒の香りを楽しむ上でワイングラスは適しており、ワイングラスで日本酒を提供する店も多いそうです。

【オーストラリアは日本にも輸出】
 量自体はアメリカに比べると多くありませんが、ここ11年で清酒の輸入が3倍に伸びているオーストラリア。食の情報サイト「Good Food」の記事によると、発泡性のものなど、若者の間でも人気が高まっているとのこと。カクテルの材料としても重用されているようで、フルーツの入った日本酒ベースのカクテル「Satori」の写真が掲載されています。

 また、オーストラリア唯一の酒蔵「Sun Masamune」のお酒「豪酒」は内外で人気があり、日本にも「逆輸入」されているようです。

【温かいのがお好み?】
 海外の人はどうも日本酒を温めるのが好きなようです。CNNの記事では「良い酒は電子レンジでチンしてはダメですよ」、Good Foodの記事では「酒は温めて飲むべきという大きな勘違いがある」という記述があります。冷か燗か、銘柄によって適した飲み方があり、ラベルに記されているはずですが、どうやら「日本酒は温めて飲むもの」という先入観があるようです。

【日本酒ソムリエコンテスト】
 イギリスのワイン情報サイトは、先月ロンドンで初めて開かれた日本酒のソムリエコンテストの様子を伝えています。審査は銘柄を隠して日本酒の品種を当てる利き酒で、優勝者はアラブ首長国連邦の男性でした。主催したのは酒ソムリエ協会という、日本酒の海外での認知度を向上させる目的で活動している団体。海外でのこういったPR活動も徐々に盛んになっているようです。

 和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、政府も「クールジャパン戦略」として、和食を含め日本文化を海外に積極的にプロモートしていく姿勢を打ち出しています。海外で和食の消費量が伸びれば自ずと日本のお酒の消費量も増えるはずです。長い目で見れば、今言われているブームがほんの序章に過ぎなかったということになるのかもしれません。

Text by NewSphere 編集部