米メディア、イチローにメジャー単独3000安打を期待か?

 野手として、初めてメジャーリーグのチームとの契約を結んだ日本人野球選手—-現在米大リーグ、ヤンキースに所属する、イチロー外野手(39)が、米東部時間21日夜のブルージェイズ戦で、金字塔を打ち立てた。日米プロ野球での通算4000本安打を達成したのだ。

【日本からの祝福の声】
 メジャーリーグで、4000本安打を記録したのは、ピート・ローズ(4256安打)とタイ・カッブ(4191安打)だけ。この2人に次ぐ大記録として、日本では祝賀ムードがあふれた。安倍晋三首相が、「とてつもない数字だと思う。野球界に新たな偉大な目標ができた。イチロー選手、本当におめでとうございます」と首相官邸で祝福したほか、古巣マリナーズ、王貞治ソフトバンク球団会長、長嶋茂雄巨人終身名誉監督らが相次いで賛辞を送った。

【アメリカNo.1ヒッターのメッセージは】
 ただし、アメリカでは、異論があることも否めないようだ。理由は、今回の「4000本」というヒット数が、日本のパ・リーグ時代のヒット数1278本との合算であること。「2722本」という大リーグでのヒット数だけを数えるならば、達成者は50人以上いる、という論理だ。

 USAトゥデイ紙は、ナンバーワン・ヒッター、ピート・ローズ氏本人の談を紹介している。

 同氏は、「日本のプロ野球をとやかく言うわけではないが」と前置きしつつ、日本のパ・リーグでのヒット数を数に入れるのであれば、自分も「プロ野球選手」だったマイナーリーグ時代のヒット数を入れてもらいたい、と鼻息荒く語り、その理屈が通るのならば、ヘンリー・アーロンやスタン・ミュージアルも大台の「達成者」になるはずだ、と主張している。

 同氏は“ナンバーワン・ヒッター”の称号を渡すつもりはない、と語ったが、「もし今、自分に投票権があったら、イチローの殿堂入りを支持する」と賛辞を送った。

【メディアの評価】
 39歳のイチローが、ヤンキースとの間にあと1年の契約を残していることを挙げ、「誰にも後ろ指を指されることのない」メジャーリーグ単独の3000本安打を達成することを期待する—-という論調がアメリカのマスコミで目立つ。

 一方、スポーツ専門局ESPNは、メジャーに移籍した2001年以降のヒット数は、アルバート・プホルス(2347本)、マイケル・ヤング(2344本)、デレク・ジーター(2300本)、フアン・ピエール(2147本)など、メジャーリーグを代表する、そうそうたる名選手に大きく水をあけ、イチローがダントツの1位であることを紹介している。

 ハフィントン・ポストは、メジャーデビュー後13年間のヒット数でいっても、1926年~38年に2648安打を達成したポール・ウェイナーを抑えて、イチローが1位だとしている。

【米球界からの賛辞】
 ハフィントン・ポストはまた、メジャーリーグ界から送られた、惜しみない賛辞を紹介している。

 ヤンキースのジラルディ監督が「わたしの場合、Tボール時代を含めた全野球人生でも4000本安打には遠く及ばなかった。彼はすばらしいヒッターだ」と賛辞を送った。4000本目の安打を許した(元マリナーズの同僚の)ディッキー投手は、「彼ほど高いプロ意識を持った選手はいない。彼と同じチームで野球ができたことはすばらしい喜びだ」と語った。現在の同僚、アルフォンソ・ソリアーノ氏も、「信じられない偉業。よほどのヒッターだけが到達できる数字」と祝辞を述べた。

 一方、イチロー氏は「4000本という数字はあくまでも通過点」と冷静に振り返りつつ、ファンが記録に歓声を上げ、チームメートが1塁に駆け寄って祝福したことには「予想しておらず、感激で半泣きになった(気持ち的には)」と喜びを語ったという。

Text by NewSphere 編集部