日本車がEUで不利に? 新「欧州製優遇」制度、日本政府が対象入り求め交渉
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欧州連合(EU)が域内産業の強化を目的に進める「Made in Europe(メイド・イン・ヨーロッパ)」政策をめぐり、日本政府が警戒を強めている。中国などへの依存を減らし、欧州での生産を増やす狙いだが、制度の設計次第では日本で生産した自動車がEUの補助金などで不利になる可能性があるためだ。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、日本政府は日本企業を新制度の対象に含めるため、EUとの「二国間合意」を優先課題として交渉している。
◆「EU製」を公共調達や補助金で優遇
欧州委員会が3月に発表した「産業加速法(Industrial Accelerator Act)」案は、自動車やネットゼロ技術などの戦略産業でEU域内の生産を増やすことを目指す。製造業がEUの域内総生産(GDP)に占める割合を、2024年の14.3%から2035年までに20%へ引き上げる目標も掲げている。
自動車では、公共調達や公的支援の対象となるEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車に「EU原産」の要件を設ける。
法案の別添文書では、まず車両をEU域内で組み立てることを条件とする。さらに、バッテリーを除く部品について工場出荷価格ベースで70%以上をEU原産とすることや、バッテリーの主要部品にもEU原産要件を設けている。
◆日本製部品は同等扱いでも「組み立て」は別
ただし、日本車について「部品の70%をEU製にしなければならない」と単純に捉えるのは正確ではない。
法案では、EUと自由貿易協定(FTA)や関税同盟を結ぶ国などの部品について、一定の条件下でEU原産と同等に扱う規定がある。日本はEUと経済連携協定(EPA)を結んでおり、日本製部品もこの仕組みの対象になり得る。
一方で、「車両をEU域内で組み立てる」という条件は別だ。このため、日本メーカーでもEU域内で生産する車と、日本で完成車を生産して輸出する車では影響が異なる可能性がある。
新制度は日本車のEUでの販売そのものを制限するものではない。問題は、公共調達や補助金などの対象になれるかどうかだ。FTも、EU域内での組み立て要件などによって、域外メーカーが不利になる可能性があると伝えている。
◆背景に中国メーカーの急伸
EUがこうした制度を打ち出した背景には、域内自動車産業の競争力低下と中国メーカーの急伸がある。
欧州委員会の影響評価書によると、中国からEUへの自動車輸入は2025年上半期に前年同期比35%増え、2021年比では380%増加した。一方、EUから中国への輸出は50%減少。中国車のEU市場シェアは2025年7月に9.9%に達した。
欧州委員会はこうした状況を踏まえ、公共調達や補助金を域内生産の拡大につなげ、サプライチェーンを強化する狙いだ。
◆日本政府、首相レベルでも懸念
日本政府は法案の公表後、EU側への働きかけを続けている。5月には赤澤亮正経済産業相がEU側に「産業加速法案の自動車分野における懸念」を申し入れ、6月には高市早苗首相もウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長に懸念を伝え、「適切な対応」を求めた。
さらにFTによると、日本政府は、日本企業が制度開始時から対象に含まれることを保証する「二国間合意」をEUと結ぶことを優先課題としている。EU側も各国との個別協議には応じる姿勢を示す一方、日本のクリーンエネルギー車向け補助制度などがEU企業に十分開かれていないとの不満も示している。
同様の懸念を持つイギリスやトルコも、自国の自動車産業を「Made in Europe」の対象から外さないようEUに働きかけている。だが欧州議会では、例外をイギリスなどEUの近隣国に限るべきだとの意見も出ている。
法案はまだ審議中で、最終的な制度は変わる可能性がある。中国への依存低減を目的に始まった「Made in Europe」だが、その線引きは日本車の欧州市場での競争条件にも影響を及ぼしそうだ。




