トランプ関税、“味方”からも異議 ウォール街も声あげ始める
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トランプ米政権が打ち出した大規模な関税政策に対し、アメリカ国内の各界から批判が相次いでいる。ウォール街の著名投資家や共和党議員、さらには政権チーム内のイーロン・マスク氏までもが異議を唱えている状況だ。
◆金融界は「経済的核の冬」を招くと警告
トランプ氏の関税措置を受け、S&P500指数はわずか3日間で10.7%も下げ、アメリカ株式市場からは数兆ドル規模の資産価値が失われた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、投資会社パーシング・スクエアの創業者で億万長者のビル・アックマン氏は、トランプ氏の関税政策は「経済的核の冬」をアメリカ自ら招くとして警鐘を鳴らしている。アックマン氏は国際交渉の時間を確保するためとして、90日間の関税適用猶予を訴えている。
党内でも不協和音が響く。ワシントン・ポスト紙によると、ケンタッキー州選出の共和党上院議員ランド・ポール氏が「共和党議員たちは皆、株価を見て心配を募らせている」と語っている。多くの共和党議員は表向き強気な姿勢を見せつつも、水面下では深刻な懸念を抱いているという。
◆超党派法案提出への動き
ワシントン・ポスト紙によると、共和党上院議員7人が、関税に歯止めをかける超党派法案を後押ししている。
これに対しドナルド・トランプ大統領は猛反発し、こうした議員たちは「信じがたい裏切り者だ」と厳しく非難した。トランプ氏はソーシャルメディア上で「彼らはトランプ妄想症候群(TDS)にかかっている。それ以外に何が問題だというのか」と不満をぶちまけた。
だが、WSJによると金融界からも、関税に歯止めをかける議会の動きに期待が上がっている模様だ。議会がトランプ政権を説得し、少なくともアメリカと協議中の国々に対し、関税適用を先延ばしする措置を望んでいるという。
◆真っ向対立のマスク氏、「ゼロ関税」を提唱
盟友からも不満が漏れる。ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ政権の重要メンバーであるイーロン・マスク氏は、公の場で関税政策に異議を唱えた。マスク氏はイタリアの極右政治集会にビデオ通話で参加し、アメリカと欧州連合の間で「ゼロ関税」を実現し、事実上の自由貿易圏を作り上げたいという考えを披露した。
JPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモン氏も年次書簡で、トランプ氏の関税政策が長期的にはアメリカに悪影響を及ぼす恐れがあると表明した。ダイモン氏は「経済は昔から世界を結びつける接着剤のようなものだ」とした上で、「アメリカ・ファーストという考え方は問題ないが、アメリカが孤立してしまっては意味がない」との見解を示した。
一方、トランプ氏は強気の姿勢を貫く。「市場がどう動くかは予測できないが、問題を解決するには時に苦い薬も必要だ」と述べ、関税政策の必要性を強調した。