ギリシャ、なぜ時代に逆行の「週6日勤務制」を導入したのか
昨年秋に可決され、今月施行されたギリシャの新しい労働法では週6日勤務制が盛り込まれ、話題を呼んでいる。
◆新しい労働法が導入開始
昨年9月、ギリシャ政府は新しい労働法(5053/2023)を制定。今月から導入された新法は2019年の欧州議会・理事会指令に批准したもので、雇用関係の枠組みを大幅に改正するとともに、行政手続きを簡素化し、運営を改善するものだとの説明がある。新法では、従業員を週5日単位で雇用する事業における6日目の雇用に関する規定を導入。6日目の雇用は8時間を超えず、日給は40%増額される。
法律はすべての事業が対象ということでではなく、24時間体制で継続的に操業している企業や、シフト制勤務をしている企業に適応される。一方で、ホテルやレストランなどのサービス業ではすでに週6日制が認められているという。
ギリシャ政府は、この新しい規定を導入した背景として、高齢化による人口減少とスキル労働者不足を挙げている。同国のキリアコス・ミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)首相は、この状況を「時限爆弾」のようなものだと説明。2009年のギリシャ危機以来、約50万人が他国へ移住。そのうちのほとんどが学歴を持った若者であるとのことだ。また闇労働のような状況を避け、適正な給与の支払いを義務付けるといった狙いもあるようだ。(ガーディアン)
◆トレンドと逆行する動き
仕事に多くの時間を割くのではなく、仕事以外の時間も充実させるなどといったワークライフバランスが定着化し、イギリスやドミニカ共和国などでは週4日制の実験導入が行われるなか、ギリシャの新法はトレンドと逆行している。実際、ユーロスタットの2023年のデータによれば、ギリシャはすでに欧州連合(EU)のなかで労働時間が最も長いという結果だ。EU平均の週36.1時間に対して、ギリシャは39.8時間、最も労働時間が短いオランダに比べると、7.6時間も長い。新法は労働者にとってメリットがあると政府は主張するものの、ギリシャ国民にとっても受け入れがたいものである。
さらに、ギリシャの労働賃金に関しては、1時間あたりの平均賃金15.7ユーロと、EUのなかでは最も低い国の一つで、EU平均の約半分であった。他方、物価上昇のトレンドも国民の不満をさらに増幅させているようだ。経済成長を加速させたいギリシャ政府だが、国民の理解を得られなければ、さらなる労働人口の流出というリスクも懸念される。