急成長する「過激な観光」市場 問われる倫理
◆過激なアドベンチャーツーリズムという成長市場
アクシオスの記事は、新しい技術やパンデミック後の需要などが後押しし、過激な観光市場(extreme tourism)が急成長していると伝える。技術の進歩と一般企業の参入により昨今活発化している宇宙旅行や、南極訪問など、高額な費用と危険を伴う「旅」が、新しい観光体験になりつつある。また、ネパールが発行したエベレスト山頂への許可証は、過去最高数を記録した。超富裕層にとっては、プライベートジェットでの世界旅行や宇宙旅行の費用は障壁ではなく、ステータスを誇示する新たな手段になっている可能性がある。同時に、超富裕層に限らず、オーセンティックなものを求めて、より冒険的な旅を選択する傾向もあるようだ。パンデミックを経験し、人々のなかにYOLO(You Only Live Once:人生は一度きり)のような刹那的な人生観が広がっているということも考えられる。
一方で、当然リスクや倫理的な側面については考える必要がある。ツアー参加者は、怪我や死亡といったリスクに同意しているとはいえ、自己責任で完結するとは言い切れない。今回のタイタン号のような事故では、アメリカ、フランスおよびカナダ当局が、大規模な捜索活動を行った。非常事態における救命探索のコストは、ボランティア団体や公的機関が担うこととなり、究極的な負担者は納税者である。過激なアドベンチャーをめぐる安全性や、責任と倫理については、今後も議論の余地がありそうだ。
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