NY市、フードアプリ配達員の最低時給を2800円へ 大幅改善への反応は

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◆労働条件の改善は、引き続きの課題
 大幅に賃金が改善されるというのは、配達員にとっては「勝利」だ。配達員は、パンデミックやハリケーンなどの悪天候の中での過酷な労働を課され、事故や犯罪に巻き込まれるというリスクも負ってきた。配達員団体のロス・デリバリタス・ユニドス(Los Deliveristas Unidos)が労働状況の改善を求め、これまでに働きかけを行ってきた背景がある。

 一方、必ずしもこれがハッピーエンドというわけではなさそうだ。アメリカにおけるフードデリバリーの大手であるドアダッシュは反発を見せ、法的手段を取ることもいとわないというコメントをしている。逆に、配達員側からは、ニューヨーク市の生活費や配達を行うための経費などを考慮すると、今回の約3倍の賃金水準引き上げも十分ではないという見方もある。さらに、今回の最低賃金の引き上げがきっかけとなり、すべての配達リクエストを引き受けず、選択的に引き受けているような配達員がアプリから閉め出され、残った配達員に負担がかかるのではないかという懸念もある。

 パンデミック以前からニューヨーク市民の生活に欠かせない存在であったフードデリバリーアプリのサービス。配達員の労働条件の改善は、引き続きの課題ではある。しかし、ニューヨークが先陣を切って、労働環境の改善に取り組むことによる、他都市への波及効果は期待したいところである。

Text by MAKI NAKATA