日本アニメの優位性は失われていく? 業界の重鎮は前途を危惧

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◆次世代育成ができない 業界の重鎮が懸念
 日本アニメの快進撃にもかかわらず、業界に警告を発するのはアニメプロデューサーの丸山正雄氏だ。漫画界の巨匠、手塚治虫氏の虫プロダクションからキャリアをスタートさせ、才能あるクリエイターを発掘して数々の素晴らしいアニメを世に送り出してきた。最近では『鉄腕アトム』のエピソードをリメイクした漫画『PLUTO』のアニメ化にエグゼクティブプロデューサーとして参加している。

 丸山氏はAFPのインタビューで、「日本では、もはやアニメーションの訓練を受けている人はいない」と指摘。日本は「カワイイ」女性キャラクターを主役にするなど、金になるジャンルのアニメを量産することに夢中になっており、アメリカのディズニーやフランスのアートハウス作品に芸術性の点で「必ずしも秀でているとはいえない」と危機感を表した。

 アニメを量産することで時々成功する作品も出るが、それが次世代の才能を体系的に育てることから目を逸らすことにつながっていると丸山氏は警告。若手アニメーターに積極的に投資する中国と比較した。

 中国が日本に追いついていないのは、表現の自由に対してまだ多くの制限が課せられているからで、こうした制限から中国が解き放たれたなら、日本はあっという間に追い抜かれるだろうとしている。

◆若い世代の仕事が奪われる? アニメ界にもAIの波
 もっとも中国テクノロジー系サイト『PINGWEST』によれば、中国ではAI(人工知能)が生成するアートの影響で、多くのアニメーターが職を失うという問題が出ている。

 アメリカでもAIへの懸念が広がっている。アニメーションライターのフランク・ギブソン氏も、入門レベルのライターやアニメーターが行うような仕事はAIに取って代わられる可能性があると指摘。制作の初期段階をAIが担えば、若いアーティストの学習の機会が失われてしまうと述べ、よりクリエイティブな仕事まで上り詰めることができる次世代が減ることを危惧している。(米エンタメ情報サイト『IGN』)

 テクノロジーを使って仕事が楽になるのなら、必ずしも悪いことではないという意見もあるが、人が働けなくなるというコストと天秤(てんびん)にかけた場合、AI活用のデメリットはメリットを上回ると指摘する米業界関係者もいる。丸山氏が指摘した問題をさらに悪化させる可能性もあり、日本のアニメ界にも新たな課題となりそうだ。

Text by 山川 真智子