希少で高価になるフォアグラ 動物愛護だけではない理由とは

フランス・パリで売られるフォアグラ(9月5日)|OKcamera / Shutterstock.com

◆メスのカモにも強制給餌
 この非常事態を打開すべく、南西部ジェール県の農場では、メスのカモの強制給餌も開始した。通常フォアグラを得るために強制給餌されるのはオスだけだ。メスはオスよりも体が小さいため収益性が低いとみなされ、通常は孵化時に排除されるからだ。

 オス・メスによるフォアグラの味には差がないが、価格はフォアグラ不足も相まって急騰している。現在、生のフォアグラの取引価格は1キロあたり55~60ユーロで、通常より15~20ユーロ高値だ(20minutes、12/6)。

◆二手に分かれるネットの反応
 政府機関のフランス・アジール・メールの調べによれば、世界に流通するフォアグラの70%はフランスで生産されており、2020年にはフランス住民1人につき約230グラムのフォアグラを消費した。2019年と比べると消費量は減少しているが、パンデミックでレストランが長期休業したためで、フランス人のフォアグラ好きに変化があったわけではないだろう。

 しかし、フォアグラ関連ニュースに寄せられたフランス人のコメントを読むと、フォアグラ嗜好一辺倒というわけでもないことがわかる。「あんなおいしいものはない」「フォアグラがないなんて、世も末だ!」とつづるフォアグラ肯定派もいることはいるが、「可哀想な鳥たち」「君たちは病気の肝臓を食べているとわかっているのか?」という否定派の声も少なくないからだ(20minutes)。

 フォアグラ自体を否定するわけではないが、「(強制的に食べさせず)鳥たちが自然に栄養をため込むのを待つべきだ」という意見や、「メスのカモは繁殖道具に過ぎないなんて……悲しすぎる」というコメントも目につく。さらには、「最近植物性の(フォアグラならぬ)フォー・グラを食べたけど、おいしかった」とする書き込みもあり、フランス人の意識も徐々に変化しているようだ。(同上)

Text by 冠ゆき