自分の預金おろすための「銀行強盗」頻発 レバノン襲う未曾有の経済危機

襲撃のあったビブロス銀行の支店(レバノン・ティルス、10月4日)|Mohammed Zaatari / AP Photo

 レバノンでは、このところ銀行強盗が相次いでいる。9月16日の金曜には1日で5件も発生した。犯行に及ぶのはいずれもギャングではなく一般市民で、しかも銀行の顧客だ。要求は一様に、預金を引き出したいというもの。なぜこんな事態となっているのか?

◆価値を95%落としたレバノン通貨
 一時期は中東のスイスとまで謳われたレバノンだが、現在は世界銀行が「19世紀半ば以降最悪」と形容する財政危機に陥っている。国内総生産は2018年の549億ドルから2021年には181億ドルに縮小。世界銀行曰く戦時に匹敵する急落ぶりだ。

 国の負債は国内総生産(GDP)の150~170%に達し、レバノンポンドの価値はこの2年で95%下落し過去最低水準となった。ハイパーインフレにより国民の貧困率も急上昇した。国連機関である西アジア経済社会委員会(ESCWA)によれば、すでに約80%が貧困状態にあるという。

Text by 冠ゆき