油田発見で南米最貧国から急成長 ガイアナは「呪い」を乗り越えられるか
◆資源収入が国をダメにする 「資源の呪い」とは
もっとも、石油が繁栄を保証するとは言えない。ガイアナの隣国で世界有数の石油埋蔵量を誇るベネズエラは権威主義的政権下で貧困が蔓延しているし、ナイジェリアでは石油による富が破滅的な使われ方をしている。こういった資源に恵まれた国で見られる汚職の蔓延、非石油産業の崩壊、民族・政治対立の激化、環境破壊といった問題は「資源の呪い」と呼ばれており、資源国が乗り越えなければならないものだ。(WPR)
ガイアナのアリ大統領は、石油産業から得た資金を使い、自国を域内の医療、教育、輸送ハブに育てるという野心的ビジョンを掲げている。「資源の呪い」を避けるため、新たに獲得した富を使って長期的に持続可能な経済を構築する計画だ。石油ブームのなか、投資先としても国際金融機関や政府系ファンド、投資ファンドなどから注目を浴びている。(フィナンシャル・タイムズ)
WPRは、資源管理の成功モデルとなっているノルウェーのようになることが今後の課題だとしている。
◆油田で領土問題再燃 ほかの課題も山積み
ガイアナには 「資源の呪い」以外の問題もある。実はベネズエラとの間に領土問題を抱えており、油田の発見で120年にわたるこの問題が復活した。現在国際司法裁判所に申し立てを行っているが、地政学的リスクとなっている。(WPR)
輸送インフラを整える目的で建設予定の、ブラジルに続く幹線道路ももろ刃の剣となりそうだ。新設されるガイアナの港には貴重は貨物が運び込まれることになるが、同時にブラジルの国境地帯から危険な森林伐採業者、土地収奪者、資源採掘者までも呼び込むことになる可能性がある。ガイアナではアフリカ系住民とインド系住民の分断も長らく続いており、政治的な問題も残っている。また洪水に対する脆弱性も世界銀行から指摘されており、石油がもたらす富だけですべての問題を解決することは難しそうだ。
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